40代の転職は、まだまだ挑戦的な30代や、残りの仕事人生に賭ける50代と異なり、住宅ローンや子供の学費などの世代環境なども重なり、どうしても「守りの転職」になってしまいやすい側面があります。守ろうとすればするほど、選択肢が狭くなり、転職するにしても、転職を思いとどまって会社に残るにせよ、不完全燃焼になってしまう可能性が高まります。

同業種・同職種という選択の落とし穴

転職する際に、メーカーや金融機関、商社など、転職前と同じ業種に移動する割合は、全体平均で36.3%。ところが40代はこれが48.4%まで上昇します(逆に50代は30.4%まで低下)。また、営業や経理、技術職など、転職前と同じ職種への平均移動率は61.2%ですが、40代は81.7%と全世代で最も高く(これも50代で71%に低下)、明確に40代のリスク回避傾向がうかがい知ることができます(出典:リクルートワークス研究所「ワーキングパーソン調査2014」)。

もちろん、「せっかく積み上げてきた経験がある業種や職種から離れて、ゼロからスタートすること」を嫌うサンクコスト(埋没費用)の側面もありますが、もしそれだけなら、より経験を積んだ50代のほうが同業種・同職種での異動率が高くなるはずなので、これだけでは上記の現象を説明しきれません。ここでお伝えしたいのは、同業種・同職種への転職がよくない、という意味ではなく、異業種・異職種でのチャンスを選択肢に加えないことのリスクです。

先日お会いした、Aさん(47歳)は、もともと、ある都市銀行のインターネットサービス事業を、事業企画として育て上げてきた辣腕バンカーでした。法人向け営業として長年積み上げてきたバンカーとしてのキャリアの上に、その後、担当となった仕事で、インターネットサービスをゼロから学び、利用率が進んでいなかった事業を軌道に乗せた立役者でもありました。ところが2年ほど前、ちょっとした意見の食い違いで担当部長との人間関係が悪化、将来のキャリア形成に自分の意思が反映しづらいという環境も相まって転職を決意し、活動を始められました。

複数のヘッドハンターから声がかかり、なかには、法人向けクラウドサービスの経営企画幹部や介護サービス会社の営業担当役員など、責任あるポジションもあったそうです。ただ、どうしても銀行業という仕事への執着があったため、ベンチャーと言ってもいいインターネットバンクのサービス開発担当部長として転職をされました。

最初は、思い通りに辣腕がふるえたものの、金融機関ではない事業が本業の、親会社オーナーの意向が徐々に経営陣へのプレッシャーとなり、結果的に前職の銀行以上に関係性が悪化、3年を経ずして再度転職活動をすることに。

「あのときあまりにも異業種を退け、こだわりを押し通し過ぎた自分に少し後悔しています」というAさん。現在は、自らさらに幅を広げ、「経営者のビジョンに共感できるか」「事業戦略に独自性があるか」という観点を軸に、業種にこだわらない転職活動をしておられます。

強烈な「嫁ブロック」とどう向き合うか?

転職アドバイザーとして、素晴らしい出会いに立ち会うことは、本当にうれしい瞬間です。ただ、内定から条件通知へと順調に話が進み、あとは内定受諾のみという段階で、家族(特に多いのは配偶者)からの反対でストップがかかりやすいのも40代の特徴です。

たとえば妻が専業で子育てをしながら、一家の家計が夫側にかかっている場合は、当然ながら、なおさら家族の意見は大きな影響を与えます。

ご本人が「この会社・経営者となら、うまくやっていける」と判断し、仕事内容や責任・権限に納得し、やりたかった分野での新天地を見つけても、年収がダウンする場合や、単身赴任の可能性がある場合、会社の規模が前職より小規模になる場合など、家族が不安を覚える要素は無数にあります。実際に、家族の反対で転職を断念する方も、実際少なからずおられます。

ただ、決して軽くはない転職を一度は決意したのですから、それなりの理由はあります。転職を断念したとしても、そもそも課題は残るわけですから、残留することにもメンタルなプレッシャーなどのリスクはあります。

では、もし自分が家族の反対にあったら、具体的にどう向き合えばいいのでしょうか? 相手先企業には、場合によっては「家族の反対を説得できないくらい入社動機が弱いのか?」と見られるリスクもあるので、極力時間をかけずに納得を得るほうが得策です。エージェントや、紹介者にも相談して、できるだけ多くの情報を得ること、また、腹を割って話せる相手であれば、相手先企業の経営者や人事責任者に正直に伝えて、過去の類似例などから乗り越え方のアドバイスをもらう方法もあるかもしれません。

そうやって得た情報をもとに、不安を感じる家族に向き合い、納得を得るためには、大きく以下の4つの要素でポイントを整理できます。

(1)現在の会社に残るリスク

たとえば経営不安など、残っていても最終的に年収が下がるリスクやポジション変更リスク、人間関係など精神的リスクなど

(2)転職先候補企業の可能性

事業内容の将来性や、同業の中での優位性、財務的安定性など

(3)転職後の条件変化

特に反対の原因になる年収低下は、あくまで入社初年度の数字であることが多いので、数年後、あるいは生涯年収での実現可能額など

(4)転職することによる自分自身の変化

やりがいある責任を任せてもらうことで、よりアグレッシブに過ごせるメリットなど

あなたが直接見聞きしていることであっても、家族にとっては知りえないことも多く、不安を抱くのは当然のことです。強引に説得しようとするのではなく、いかに正しくリアルな情報を伝えるか、それによってできるだけ自分と近い目線・価値観を持ってもらい、味方になってもらえるか、が最重要ポイントです。

それでも不安を解消できない場合、家族の考え方に理があり、最終的に判断を変えることがあるかもしれません。ただ、後悔がないレベルまで情報を集め、正しく伝えた上で意思決定をすることが、最終的には自分自身を守ることにもつながると考えています。


※この記事は日経電子版「NIKKEI STYLE」に掲載されました。CR40を運営するルーセントドアーズ株式会社代表の黒田真行が執筆しています。

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