30年近くにわたり人材業界に携わってきたルーセントドアーズ株式会社代表の黒田真行さん(リクナビNEXT元編集長)による、未来のキャリアを考える連載第2回です。今回のテーマは「ジョブハンティング」。どうしても行きたい会社への応募を諦めてしまう、そんな考え方を「幻想」と呼ぶ黒田さんの言葉の真相は……? また、そうして見えてくるのは、自らのキャリアに対して持つべき”ある姿勢”でした。

「行きたい会社はあるが、募集していないから応募できない」

学生時代から興味を持っていたアニメの制作会社があって、2年くらいホームページをチェックしているんですが、ニッチな人気企業でなかなか欠員が出ないようなので、他社も探そうと思っています。

先日面談をした、26歳で現職フリーターの方に希望業界について質問したところ、ふと彼の口から出てきた言葉です。
仕事探しをお手伝いする仕事をしていて「行きたい会社があるが、募集していないから応募しない」という話はこれが最初ではありません。私はいつものように、ぜひアタックしてみることを勧めました。

限られた人生の中で、どうしても惚れ込んだ会社がそこにあって、自分が仲間入りすることでなにがしかの貢献ができると考えているのに「ホームページで募集していない」という理由でみすみす諦める必要など、どこにもありません。日本人の過剰な几帳面さというか、きまじめさというか、こういう話を聞くたびに日本の教育システムに根本的な疑問を感じてしまうほどです。

自分は●●という者で、あなたの会社のこういうところに強い魅力を感じている。貴社に魅力を感じている理由は、こういう体験や事実に基づいている。可能であれば、貴社においてこういう仕事をさせていただくことを希望している。ちなみに現時点で今自分が持っている経験やスキルはこういうものがある。不足点もあるが、誰よりも積極的に学んでいく姿勢は持っている。できれば、添付の履歴書や職務経歴書を見て選考をいただき、少しでも可能性があれば一度お会いいただけないか? 貴社のホームページを拝見して、現在人材募集していないことは把握している。現状募集をしていないために選考そのものができない場合は、次回募集をされる際にお声掛けいただければ幸いです

例えば、上記のような趣旨でメールや手紙を送ることはできるはずだし、自社に強い興味を持った志望者から連絡をもらって、いやな気分になる経営者や人事も少ないのではないかと、私は想定しています。

もちろん、現実には受け入れられない可能性が圧倒的に高いのも事実です。ただ、人生の貴重な時間を何年も使って、ホームページで人材募集の有無をチェックし続けるくらいに思いの強い会社なのであれば、たとえ当たって砕ける結果になったとしても、体当たりでアタックをしてみたほうが後悔は少ないのではないか、というのが私の考え方でもあります。

ジョブハンティング、という考え方

ヘッドハンティングという言葉があります。これは、企業側が自社に必要な特定の人材に近づき、仕事そのものや処遇、未来への期待感などの材料で口説き落とし、リクルーティングする手法を指します。単に求人サイトに掲載するだけでなく、さらに能動的に人材を採用する動きといえるでしょう。

これとは真逆に、求職者側が自分にぴったりの仕事を見つけに行くという考え方が、ジョブハンティングです。能動的かつダイナミックに、募集していない会社にも自らを売り込みに行く動き方は、これまでの日本の転職市場ではまだ数少ないのが実態です。たぶん今後は、まずIT系職種や知財、財務、経営企画などのスペシャリスト分野からこのような動き方が広まっていくのではないかと推測しています。

今の時代、企業の持つオフィシャルなウェブサイトには連絡先が公開されていますし、SNSなどを用いてその企業にゆかりのある人物をたどって接触していくこと(ソーシャル・ジョブハンティング)も出来るようになりました。一昔前には実現できなかったアプローチ方法が目の前に存在しているのです。自分が興味を持っている企業が、正式に公開募集を始めるまで律儀に待ち続けるというだけではなく、そんな方法もぜひ視野に入れておいていただければと思います。

キャリア戦略の重要性

ジョブハンティングを能動的に行うためには、通常の転職活動以上に、自らのキャリア戦略の設計が重要になります。求人サイトに陳列された案件を選んで応募するのとは違い、募集していない会社に選考コストを要求することになるため、自分のキャリアをプレゼンテーションできなければ、企業にとっての悪印象を増幅させることにもつながりかねないからです。

  • 自分はいったい何屋として飯を食っていくつもりなのか?
  • どんな環境やコンディションで働くと幸せなのか?
  • どんな人たちと仕事に向き合いたいのか?
  • 最終的に成し遂げたいこと、ゴールはどこに置いているのか?

自分自身に徹底的に向き合い、その答えを、誰にでもぶれなく信念を持って説明できる状態にしておくことで、第一関門の突破率は大きく変わってくるはずです。
確固たるキャリア戦略ができあがれば、

  • なぜ自分はこの会社の門をたたいたのか?
  • 自分を採用したら、会社にとってどんなメリットがあるのか?

ということも、説得力を持って語れるようになるはずです。


※この記事は求人メディア「パラフト」に掲載されました。CR40を運営するルーセントドアーズ株式会社代表の黒田真行が執筆しています。

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