転職支援サービス ルーセントドアーズ代表取締役の黒田真行さんによる、これからのキャリアを考えるための連載第4弾! 今回は、20代に特に多く見られるという転職理由「上司がアホだから」を切り口に、キャリア設計を考えてみます。キャリアチェンジをするのは一体誰のため? 深呼吸をしながら原点に立ち返ってみましょう。

そもそも世界は「アホな上司」であふれている

「うちのマネジャーは本当に仕事ができなくて、一緒に働くのはもう無理です。そのままでは部署の予算が達成できないと、課の全員のボーナスにも影響があるので、主任である自分が頑張るしかなく、仕事が集中して毎日深夜残業です」(29歳・不動産賃貸・営業)

「現場が見えていないので間違った指示ばかり。せっかく開拓してきた顧客からの対応も下手で、せっかく契約寸前まで行っても課長に同行してもらうと逆に失注するくらいです。モチベーションが下がりまくりです」(26歳・広告・営業)

「社長の顔色ばかりうかがっているので誰もあの人についていかない。そんなに出世したいなら、自部署の課題をクリアしていったほうが評価されると思うのに、前任者に責任をなすりつけてばかりで最悪です」(31歳・アパレル通販・管理部門)

転職を検討している方との面談で、徐々に本音が出てくると、突如として現職上司への不満があふれ出てくるケースが時々あります。その毒々しい言葉のターゲットはたいていが直属の上司。この現象は、なぜか20~30代前半の若い世代の転職者に特に多く、何度か転職を経験していたり部署異動などで複数の上司と接している30代後半以降の方からは、めったに聞かれなくなる傾向にあります。上司への不満があったとしても、それが転職の主な理由になりにくくなる、と言ったほうが正確かもしれません。あくまで推測ですが、社会人経験を積むにつれ、どの会社に行ってもどの部署に異動しても、必ず身近に「アホな上司」が出現することを体感するようになるからかもしれません。

実際に、世界は「アホな上司」であふれています。ロールプレイングゲームの敵キャラクターのように、転職を繰り返しても、ステージごとに新たな必殺技を持った「アホな上司」が次から次へとあらわれ、部下のスタミナを奪っていく。そんなものだと考えておいた方がいいくらいです。

ただし気になるのは、「上司がアホだから転職した」という人が、転職後にしっくりいかないケースが多いこと。理想の上司や仕事環境を求めて転職したはずが、また種類の違う敵キャラに遭遇して幻滅してしまったり、もっと青い芝があるはずだと早期に転職を繰り返してしまう。どこに行っても出てくる「アホな上司」に振り回されて、本来しっかりと積み上げていくべき自分のキャリアを失ってしまうのは本当にもったいないと思います。

※ただし、極端なパワハラや過酷な労働環境など、精神的・身体的な危害が及ぶケースは
論外なので、一刻も早い避難としての退職をお勧めしています。

自分のキャリアに徹底的に利己的であること

そうとはいえ、「アホな上司」に日々付き合わされるのは苦痛でしょう。そのまま放置すれば、自分だけでなく、同僚や後輩の評価や成長機会の損失など悪影響が拡大する恐れもあります。では、いったいどうすればいいのでしょうか?

一つ目におすすめしたいのは、「アホな上司」の認識の仕方、つまり視界を切り替えること。もしも、どんな会社に行っても種類の違う「アホな上司」がいるとすれば、そのこと自体をいくら嘆いてみたところでどうしようもありません。彼らは、必ず、存在していて、確実にあなたの目の前に現れるからです。それでも自分が正しいと思うことをやり遂げるために、その障害を乗り越えることで推進力を強化するトレーニングだと思って、試行錯誤してみるのです。あるいは「アホな上司」を持ったことを、自分のキャパシティを広げられるチャンスと捉えるのも良いでしょう。

実際に、上司の仕事力が低い場合だけではなく、例えば、兼務が多い上司で十分にマネジメントが行き届かないケースや、上司が病欠で不在になってしまったりした場合に、その下で働くメンバーが急速に力をつけるケースは多々あります。「素晴らしい上司」に、素晴らしいマネジメントや育成を受けるより、実力をつける近道になることすらあります。

「でも自分はそこまで大人になれない」という人、あるいは、そんな余地すらないくらい徹底的に仕事の邪魔をされている場合は、やはり転職を検討するのは当然の選択肢です。

二つ目におすすめしたいのは、転職理由をいかに昇華させるかということです。ストレスの原因になる上司から逃れたい気持ちはやまやまだとしても、決してそれ自体を転職の理由にしないことです。もう少し言うと、「アホな上司」の存在は“転職のきっかけ”でしかありません。そのきっかけをスタートラインに、自分のキャリアをどう捉えなおし、「何を得るために転職するのか」まで考え切ることが重要なのです。さもなければ、あなた自身のためのキャリアチェンジという文脈がまったくゼロになってしまうからです。

言い方を変えれば、上司がアホだから辞めるという考え方は、どこまでいっても“他責”でしかなく、自分のキャリアを自分でコントロールしていることになりません。「アホな上司」ごときのためにあなたがそこまで損失を負う必要はないのですから、その状況をきっかけにしつつ、徹底的に、自分のキャリアを利己的に考えて次につなげていただければと思います。

自分の将来を見るためのメガネ

自分のキャリアに対して利己的であるためには、自らが置かれている会社や社内・社外の人間関係、与えられた業務の難易度といった“現在目線”の考え方とは別に、自分の将来を見通すメガネ、具体的には3年後でも5年後でも、少し先の将来に「ありたい自分像」から逆算し、そのための道筋を自分で掴みつかみとるっていく視点を持ったほうがいいかもしれません。

どれだけ素晴らしい会社であっても、尊敬できる上司に恵まれていたとしても、誰かが自分の将来のキャリアを設計し導いてくれることは本当に稀です。親身に考えてくれる上司がいたとしても、自分のキャリアをどう描き、どんな実践をしていくかを決めるのは自分自身にしかできません。キャリアプランという言葉を使うと、非常に大げさに聞こえますが、まずは3年くらいのスパンで「自分は今後、どんな仕事でどんな経験を身に付けて、誰に喜んでもらいたいのか、何を成し遂げたいのか」を考えるだけならば、そこまで難しいことではないはずです。

会社や環境に依存せず、に、自ら分の意志で自分将来を考え、実行していく力は、転職をするかどうかなどという戦術レベル以上に、あなたの仕事力を一段上へと高める役に立っていくはずです。


※この記事は求人メディア「パラフト」に掲載されました。CR40を運営するルーセントドアーズ株式会社代表の黒田真行が執筆しています。

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