ルーセント・ドアーズ代表取締役の黒田真之さんによる、キャリアを考えるコラム第6弾は「評価制度への不満」です。自分はもっと高い評価を受けるべきなのに……と、悶々としていませんか? どうしてもズレが起きやすい自己評価と他者評価の実情を、これまで2,000人以上の求職者に出会ってきた黒田さんの視点から語っていただきます。「認められない」ことを理由に転職するかどうか悩んでいるアナタ、必読です。

他者からの評価は自己評価の2割引き

「効率を上げて速く業務を処理できるようになるほど、自分ばかりに仕事が集中する。それなのに給料が同じなんて、やってられません」(31歳・女性・webサービス・企画アシスタント)

「自分より結果を出していない同僚がなぜ自分より早くマネジャーになるのか意味不明」(29歳・人材派遣・営業)

「人事考課の結果に納得がいかない。若手のチームメンバーの育成のために陰で貢献していることをまったく見てくれていない」(33歳・コールセンター・SV)

転職を考える理由の常に上位に挙がる「評価への不満」。上司や会社に腹立たしさを感じ、やる気をなくしたり自信を喪失して、誰かを呪いながら仕事をするのはやっぱり精神的にも不健康です。「次こそは見返してやる」と不満をエネルギー源にして、燃える人もいますが、結局は“内向きのパワー”なので、どこかで顧客志向や仕事志向に切り替えができなければ燃料が長続きせず、途中で息切れしてしまうことも多いようです。

(株)リクルートマネジメントソリューションズ・主任研究員の今城志保さんの「自己評価はなぜ甘くなるのか」という論文は、自己評価と他社評価を比較した興味深い内容で、文中でアメリカのWilliams & Gilovich(2012)の研究が紹介されています。その調査によると、自己評価は「自分が最も良かった状態」を基準とし、他者評価は「その人の行動の良いときと悪いときの真ん中」が基準となる、という結果が見られたそうです。

一般的に、

  • 自分が自分自身を評価すると、他者評価の2割増し
  • 他人が自分自身を評価すると、自己評価の2割引き

という評価ギャップの法則を耳にしますが、上記の調査を見るとこれもおおよそあたっているようです。

いくら自分自身が頑張っているつもりでいても、その頑張りが事実であったとしても、他者からの評価はその自己評価よりは低いものになる。もしかすると頑張り続けていれば、評価は変わるのかもしれませんが、いったんイメージが定着した評価が、新たな評価に塗り替わるまでには時間がかかることが大半です。

また、自分の頑張りを評価者である上司にどれくらいアピールするかということに、激しく個人差があることも、そのブレを生み出している要因になっているかもしれません。なぜなら、

「長所を伸ばし続けること」に専念し、自らの力で評価を塗り替える

「人間の下す評価は常に公平で正確とは限らない」としたら、いったいどうすればいいのでしょうか? 自己評価と人事考課などの結果に、大きすぎるギャップがある場合や明らかに不条理な“えこひいき”がある場合、腹に据えかねる気持ちが起こっても当然です。そんな会社を辞めて転職してしまうのももちろんひとつの選択肢でしょう。

ただ、自分自身を内省したときに、もう少し自分にもやり方があったかなと思える場合には、同じ組織にいながらにして、評価を塗り替えるチャレンジをする選択肢もあります。

先ほど少しふれたように、いったんイメージが定着すると、特にその人の特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる「ハロー効果」などによって、イメージを払しょくするために時間がかかることがあります。

そんなときは、評価者である上司に「自分がどう見えているのか?自分の課題は何か?」をヒアリングして“自分が他者からどう見えているのか”を把握した上で、必ず「何をクリアすればその課題を乗り越えられるか?」までしっかりと確認をしておく方法をおすすめします。できれば上司と、課題をクリアするための「目標」と「時期」を数字で握っておくとより効果的です。認知上のバイアスに対抗して、誰が見ても客観的な事実を明示することで、評価基準を固定化できる効果があるからです。

課題のクリアというと、弱みの克服に思えるかもしれませんが、結果に到達するための山の登り方にはいろいろな方法があります。もしプロセスを自分で設定できるのであれば、自分の得意な方法で結果を生み出すように試行錯誤したほうが、より楽しみながら業務に臨めるはずです。

評価が浸透するまでには少し時間がかかるかもしれませんが、「上司が自分を正しく評価してくれない」と受動的に悲しむのではなく、自分の長所を生かしながら「上司に正しく評価される機会を自ら作り出す」という能動的な姿勢で挑むだけで、同じ時間を過ごした場合の自己の成長率に格段の違いが出てくるはずです。

自分が経営者なら、自分自身をいくらで雇うか?

人間が人間を評価するのは、本当に難しいものだと思います。

ただでさえ人間は原則的にわがままな生き物なので、自分が何かを買う時は「できるだけ安く買いたい」と思い、逆にそれを売る立場になると「できるだけ高く売りたい」と思ってしまいます。

仕事上の評価や給与交渉などもほぼそれと同じで、企業サイドの「安く買いたい心理」vs個人サイドの「高く売りたい心理」の軋轢が起こりやすい性質をはらんでいます。

「自分はもっと評価されてしかるべきだ」「自分のもらっている給料は少なすぎる」という不満が渦巻いているときには、「もし仮に自分が経営者で、自分の預金から従業員に給料を支払っているとした場合に、“経営者である自分”が“応募者としての自分”を採用するかどうか? もし自分を採用するとした場合に、たとえば先月1ヵ月間の自分の働きぶりを思い出してみた時に、いくらくらいの給料を、自分の銀行口座から引き出して支払いたいと思うだろうか?」という妄想ゲームをしてみる方法もあります。

「より多くもらいたい自分」と「できれば安く買いたい自分」を戦わせてみた結果は、どちらも自分自身であるがゆえに、たぶんあまり嘘をつきません。


※この記事は求人メディア「パラフト」に掲載されました。CR40を運営するルーセントドアーズ株式会社代表の黒田真行が執筆しています。

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