2017年10月、有効求人倍率は1974年以来43年ぶりの高水準を記録し、1・55倍になりました。有効求人倍率は、全国のハローワーク(公共職業安定所)で仕事を探す求職者1人に対して何件の求人があるかを表すもので、1・55倍ということは、一人に対して1・55件の求人があるということです。

言い換えれば、人を求める「求人」のほうが、職を求める「求職」者より1・55倍多いということであり、企業の人手不足を裏づける数字だと言えます。

実は、有効求人倍率は09年から一貫して右肩上がりを続けており、17年4月に、とうとうバブル期の最高有効求人倍率1・46倍を超え、さらに上がり続けています。

では、有効求人倍率が高い現在は、転職するのに有利な時期なのでしょうか。実は、そんなに単純な問題ではありません。順を追って説明していきましょう。

私は、リクルートに入社した1987年から、転職、中途採用のマーケットを30年近くずっと見続けてきました。確かに、バブル期は求人が増え、90年7月、有効求人倍率は1・46倍まで上がりましたが、バブル崩壊とともに下がり、92年10月に1倍を切り、99年5月には0・46倍まで下がりました。

次に1倍を超えたのは05年12月で、その後、07年10月まで1倍を超えていましたが、世界的な景気後退、08年のリーマンショックで有効求人倍率は下がり、09年8月には、0・42倍まで下がりました。

つまり、好況→不況→好況→不況と景気は循環するため、有効求人倍率も上がればいずれは下がり、下がればいずれは上がります。ずっと上がり続けることもなければ、下がり続けることもないのです。

ただ、今回は09年からずっと右肩上がりで上がり続けており、かつ43年ぶりの高水準まで上昇しています。その意味では、不況で1倍を切っていた時期よりは、転職しやすい状況になっていると言えます。

ただ、私が危惧しているのは、これだけ長く上がり続けると、下がる期間も長くなるのではないかということです。有効求人倍率が下がり続ける地獄の期間も長くなるかもしれないと恐れているのです。

そして、これまでと時代背景が大きく異なる点が一つあります。それは、日本はこれから人口が減っていくという点です。さらに言うと、人口が減る以上に、高齢化によって働く人の数が急激に減っていくと予想されています。この労働力人口の減少は、これまでとは大きく違う点です。

こう聞くと、「人手不足なのだから、仕事にあぶれることはないだろう」と思う方もいるかもしれません。しかし、実際には人口減少による国内の市場の変化に合わせて、どの企業もAIの導入や業態の変化を推し進めています。

そうすると、最終的には時代の変化についていけた一部の人材だけが「コア人材」として企業の中で生き残り、その他の労働者は著しく市場価値がなくなり、反対に非正規雇用や職を失うことになってしまう――そんなシナリオもあり得るのです。

つまり、将来の雇用情勢がどうなるのかは、全くの未知数だということです。

好況でも、不況でも、求職者数は同じ?

次に、転職市場そのものに目を向けてみましょう。

転職、中途採用のマーケットは、ざっくり標準が年間120万人ぐらいです。不況になって求人が減ると年間80万人ぐらいになり、好景気で求人が増えると年間150万人ぐらいになります。

好不況によって求人が大きく増えたり減ったりするのに対して、実は求職者はそれほど大きく増えたり減ったりしません。なぜでしょうか。

好景気のときは、キャリアアップを目指した前向きな求職者が増えます。もっと給料のいい、待遇のいい会社に移ろうと考えるのです。

一方、不景気のときは、リストラや倒産によって、求職せざるを得ない後ろ向きな求職者が増えます。とにかく食い扶持を稼がないと生活できないという切羽詰まった求職者が増えるのです。

好景気のときは、前向きな求職者が増えますが、後ろ向きな求職者はあまりいません。逆に、不景気のときは、前向きな求職者はほとんどおらず、後ろ向きな求職者ばかりになります。なので、求職者の総数としては、求人ほど大きくは増減しないのです。

転職理由をアンケートなどで聞くと、表向きにはみんな、「キャリアアップ」などと答えます。これは、不景気のときでもそうなのですが、実態はこのように違います。不景気のときの求職者は、キャリアアップなどではない場合が多いのです。

では、求人数が多い好景気のときなら、キャリアアップとなる転職ができるのでしょうか。

好景気のときに求人が増えるのは事実です。ただ、その求人の中身を詳しく見ていくと、必ずしもキャリアアップ転職がやりやすくなっているとは言えない現状が見えてきます。


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