まず、求人数は「エリア」によって大きな違いがあります。1・55倍という高水準の有効求人倍率は、全国平均ですから、1・55倍よりも高いエリアもあれば、低いエリアもあるのです。

北海道、東北、関東、首都圏、信越、東海、関西、中国、四国、九州と、一〇ブロックに分けるとすると、求人が多いのは、首都圏、東海、関西で、日本全国どこでも、1・55倍の求人があるわけではありません。

また、「業種」によっても求人数は違います。現在、求人が多いのはIT業界でしょうか。東日本大震災からの復興と、20年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されるため、建設業界は人手不足が声高に叫ばれています。医療や介護の現場も人手不足で、求人が多いと言えるでしょう。

製造業を見ると、自動車関連はまずまず求人があるけれども、家電系は少ないなどの違いがあります。

さらに、「職種」によっても求人数が違います。技術職とひと口に言っても、ITエンジニアや機械系の技術者、電気系の技術者など、さまざまな職種があり、求人数が多い技術職もあれば、少ない技術職もあります。

事務職でも、法務や経理、人事などのスペシャリティがある事務職を事務系スペシャリスト、そうでない事務職を一般事務や営業事務などと呼び、さまざまに分かれており、求人数はそれぞれで違います。

看護師や介護士、薬剤師などは人手不足で求人が多いですが、営業職や一般事務などは人があまっており、求人も多くありません。

つまり、有効求人倍率1・55倍の高水準と言っても、エリア、業種、職種によって求人数には大きな違いがあり、その違いはまさに「けた違い」と言えるほど大きく違います。つまり、エリア格差、業種格差、職種格差があるのです。

「好況だから転職しやすい」は大間違い

そして、エリアと業種と職種、それぞれ仮に10種類ずつだとすると、10×10×10=1000ですから、1000パターンあることになり、東北の建設業の土木技術者などの求人が多い仕事もあれば、求人がまったくない仕事もあります。

有効求人倍率1・55倍と言っても、その中身はまだら模様であり、仕事を探している求職者の多くが自分の生活したい地域で、やりたい仕事に就ける、仕事を選べるだけの十分な選択肢がある状態かと言えば、まったくそんなことはないのです。

90年前後のバブル期の新卒の求人倍率は、最高で2・89まで上がりました。これぐらい高い倍率になれば、少しは選べる状態になりますが、1倍台では選べるほどの選択肢はありません。東京で業種にこだわりなく営業職で年収600万円欲しいという人がいたとしても、大阪の不動産業の営業で年収400万円か、沖縄のコールセンターで年収200万円の仕事か、どちらかしかないという状態なのです。

実際の需要と供給はバラバラであり、求職者全員が納得できる選択肢を選べるわけではなく、需要が多い地域の需要が多い職種を選べる、ごく一部の人しか仕事を選ぶことができないのが現実です。

逆に、需要が少なく供給が多いエリアや業種、職種では、企業にとって選び放題の状況です。たとえば、秘書の求人を出すと1000人ぐらいの応募があり、企業の圧倒的な買い手市場になっています。

つまり、1・55倍という有効求人倍率の裏には、非常に大きな「格差」が存在しているのです。

そして、求人数の格差だけでなく、賃金の格差も存在します。転職サービスDODAの「平均年収ランキング2016」によると、86職種中1位の投資銀行業務の平均年収は777万円、生涯賃金は3億7370万円なのに対して、最下位の86位の美容師・エステシャンの平均年収は278万円、生涯賃金は1億2378万円と3倍以上の格差があるのです。


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