脅すわけではありませんが、実際に「35歳限界説はもうなくなった」「40代でも転職しやすくなった」というような情報を鵜呑みにして、勤めている会社を辞め、転職活動をしたら70社連続不採用になったという人がいます。

「部下が自分の上司になったから」「役職定年になってむかつくから」「1500万あった年収が1200万に300万も下がるから」などと言って会社を辞めて転職活動を始めた人のほとんどは、辞める前の年収以下になりました。

こうした人が私のところに相談に来ても、最初は話を聞くだけです。

「年収1500万円でしたが、ぜいたくは言いません。1000万円の仕事でいいので紹介してください」

本人は謙虚にそう言っているつもりなのでしょうが、残念ながらそのような仕事はありません。大企業の高い壁に守られ、会社の中でしか通用しないスキルしか身につけていない人に1000万円支払います、という求人はなかなかないというのが実情です。

採用される可能性があるとすれば、年収700万円の中小企業の総務部長、言ってしまえば何でも屋のような仕事くらいかなと思っても、それをその場で相手に言うことはありません。そのような状態の方にストレートに言ってしまっては、激怒するのが明らかだからです。

多くの場合、4カ月ぐらい経てば、多くの企業採用に落ちて、はじめて現実を理解し、自分の年収の相場も分かってきます。そうすれば、落ち着いて色々と具体的な話ができるようになってくる、というのが現実です。

人は、自分に都合のいいことは、他人から言われてすぐに信じますが、自分に都合の悪いことは、それが事実であったとしても絶対に信じようとしないものです。自分で頭を打たれる経験をしないと分からないし、腹落ちしないのです。

自分を売るマーケットの調査は絶対不可欠

先ほどの話からも分かるように、求職者の多くは、実は自分の年収の相場をよく分かっていません。それは無理もないことで、ずっと同じ会社に勤めていたら、その会社での自分の役職と年収という情報しかないからです。

しかし、転職しようと思うのなら、世間一般の相場で自分の年収がいくらぐらいが適当なのか、知る必要があるでしょう。そのためには、転職マーケットの相場情報を集めて、自分なりに分析すること大事になります。

新商品を製造・販売するとなったら、まず事前にマーケットを調べるために、他社商品や顧客の情報を集めるところから始めるのが一般的でしょう。ところが、自分の転職となると、そうした調査も行わずに、いきなり自分の言い値で売り込みを始めるのです。これでは、うまくいくはずもありません。

経理の仕事で転職したいのなら、年収の相場はどれくらいなのか、経理の求人はどれくらいあるのか、どういった企業が経理担当者を新たに採用しようとしているのか、経理の中でもどういった種類の仕事が求められているのか、といったことを調べて、自分という商品を売る戦略を考えなくてはならないのです。

仕事では、こうしたことを当たり前のように行うにもかかわらず、自分の転職では一切やらないのは、なぜなのでしょうか。私なりに考えた結論は、次の2つです。

  1. そもそも転職する前に、転職マーケットの調査を行ったほうがいいということ自体を知らない
  2. どうやって転職市場の調査を行えばいいか分からない

1については、転職を考えるなら、今ここで肝に銘じておいてください。2については、これから順に述べていきます。

40代転職者の平均年収は約450万円

40代の転職実態を知るデータとしてリクルートワークス研究所が発表している「ワーキングパーソン調査2014」の数値を紹介しましょう。少し古いデータになりますが、現在は景気上昇局面の途中段階なので、この傾向は今も続いていると推定できます。

40代の転職者のうち、転職前に役職者だった人は35・3%、役職がなかった人は64・7%でした。役職の内訳は、役員クラスが2・6%、部長クラスが5・2%、課長クラスが15・0%、係長クラスが12・4%となっています。

40代で課長以上の役職についていた人は、4人に1人もいません。会社が成長しないために世代交代が進まず、「役職が上がらない」「給与が上がらない」といった不満がきっかけで転職を考え始める人は約20%、5人に1人の割合です。

40代転職者の転職後の年収を見ると、10%以上上昇した人が32・2%、10%以上減少した人が32・9%とほぼ同じです。ただ、20代、30代では、転職後に年収が上がる人のほうが5~10%多いことを考えると、40代の転職では、年収が減少する可能性が高いと言えます。

では、実際にいくらぐらいの年収になる人が多いのでしょうか。転職後、1年目の年収を見てみると、1000万円以上が6・2%、700万~999万円が6・2%、500万~699万円が19・2%、400万~499万円が15・1%、400万円未満が53・4%となっています。平均年収額は450・9万円です。

700万円以上の人は12・4%ですから、圧倒的な少数派です。これは、契約社員や派遣社員など、年収が比較的低い雇用形態になる人が18%近くいるためです。

その一方で、年収1200万円以上の人も4・8%と、約20人に1人は最上位クラスにいます。

40代の転職活動の平均応募社数は10・6社で、求職者の40%が5社以上、25%は10社以上に応募しています。応募後、書類選考を通過して面接に進める割合は約35%、平均3・6社です。面接後に内定が出るのは約30%、平均1・4社となっています。(日経スタイル連載7・7より)

それでも、「40歳からの転職」に希望はある

ここまで、40代の転職にまつわるデータをみてきました。ただ単に転職者が多いという実情を超えて、40代の転職のリアルな側面が見えてきたかと思います。

では、やはり40歳以降での転職には希望がないのでしょうか。

実は、このようなシビアな状況の中でも、しっかりと転職で「成功」を収めている事例も、数多く存在するのです。

たとえば、大都市圏・大手企業を中心に「社内失業」状態にある人の数は、465万人もいると言われています。転職もできず、とはいえ社内で管理職などのポストがあるわけでもなく、「働かないおじさん」状態のミドル人材が、余ってしまっている状態なのです。

しかし、一方で、最初にお話ししたように、日本は今、深刻な人手不足の只中にあります。中でも事態が深刻なのは、地方の中小企業です。事業規模は小さいながらも、堅実に稼いで業績を維持している企業でも、後継者がいないという理由で将来をあきらめてしまっているケースが目立ちます。

即戦力として実績のあるミドルビジネスマンが大都市では余っている一方、地方では幹部候補を見つけられない優良企業が数多く存在している――この日本の将来を揺るがしかねない「機会損失」を埋めるべく、私は40代~50代の「ミドル世代」専門の転職支援サービスを立ち上げました。

実はこのような「機会損失」は、この事例に限らず、社会のいたるところで発生しています。こうした機会損失をうまく埋めるような、個人と会社が「win―win」の関係となる転職を行うこと。

それが、40代が転職で成功を収め、幸せに生きるための共通点だったのです。


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