特に初めて転職を検討する方の場合、履歴書や職務経歴書などの書類は、書き慣れないがゆえに相当苦労されるようです。「履歴書」「職務経歴書」「書き方」などのキーワードで書き方ガイドを検索して、最低限の体裁を整えて提出するという方がほとんどです。ただ、近しいキャリアでも書き方ひとつでずいぶん印象が変わることがあります。今回は、「会いたくなる職務経歴書」について深掘りをしたいと思います。

「見やすさ」の肝は情報の取捨選択

社会人としての経験が増え、年齢が上がるほど、キャリアチェンジの節目が多いほど、簡潔に書くことが難しくなるのが「職務経歴書」です。時系列に出来事をまとめていく「編年体」や、類似の経験ごとにまとめていく「キャリア式」など、経歴内容や転職回数によって、人それぞれ苦労しながら自分にあったスタイルを探しているのではないでしょうか。

メインの経歴(社歴や職種歴)にあまり変化がなく、時々のエピソードや役割の変化を表現したい方の場合は「編年体」を選ぶことが多く、逆に転職で会社を変えたり、転職していなくても社内の人事異動で複数のキャリアを順不同に経験しているという人は、「キャリア式」を使って読みやすくまとめることが多いようです。

ただ、どちらの場合も「情報の粒度」に注意しないと、書くべき事実が次から次へと出てきてしまい、多い方だと10枚近くの大作になってしまったというケースもあります。

人事担当者は、ときには一つのポジションの募集で100人以上の応募者の書類を見ることもあります。いくら見慣れているとはいっても、5枚以上もあっては、なかなかしっかり読み込む集中力が湧かなくなってしまいます。

読みやすいフォントサイズや改行などの工夫はあるにせよ、最初の大原則はいかに情報を取捨選択するか、もっと言えば「いかに情報を捨てるか?」ということに尽きるでしょう。場合によっては、

  • 自分のキャリアの特徴を大きく分けるとこの3つに要約できる
  • 過去のキャリアは、ひとつの大きな柱に、5つの大きな枝がある
  • 起承転結で見ると4つの章に分かれる

など、できるだけ大枠で捉え直すと、説明もしやすくなるかもしれません。

起こった出来事を大小関係なく順番に並べたり、すべてを漏れなく伝えないと損をするという考え方はやめ、大きな輪郭を描いて細部や重要でない枝葉は捨てる、というくらいの方針で臨んでいただければと思います。できれば2枚、多くても4枚が上限だと思ってまとめてみてください。自分の仕事人生をできるだけ客観的にとらえるためのトレーニングにもなります。

ハートが震えたエピソードを、ストーリーで描く

選考する側の観点で知りたいことは、「その人が何をしてきたか」を材料にして、「どのような結果を生み出してくれそうな人物か」「一緒に仕事をしたときにどんな判断や仕事の進め方をする人だろうか」ということを想定することにあります。

淡々とひたすら事実を羅列した職務経歴書が多い中で、「その人の体温」や「心の動き」「ものごとの捉え方」などが垣間見えると、より印象的なものになることがあります。特に、もっとも自分らしさをPRできるエピソードについてだけは、

  • 「その課題にどのように向き合ったのか?」
  • 「なぜそう感じたのか?」
  • 「どのように周囲を巻き込んだのか?」
  • 「結果を出すためにどのような努力をしたのか?」
  • 「その結果、学んだことは何か?」

を、できるだけ具体的に、当時の自分の心情も含めてまとめてみる方法があります。すべての職務でそれをやると文字数が増えるので、ポイントになるエピソードを絞って、ストーリーを描き出します。

数字や固有名詞を含んだ具体的なエピソードや、心理も含めた臨場感のある表現ができると書類自体が鮮やかになりますし、面接に進んだ場合も、そこを中心に生き生きとした話ができる可能性が高くなります。

手順としては、まず取捨選択をした事実ベースの職務経歴書を作成した上で、選び抜いたエピソードだけに上記の色付けをしていく方法をお勧めします。

「貴社でこんなふうに貢献したい」を簡潔に

「職務経歴書」なので、過去のキャリア以外の余計なことは書いてはいけない、と思いこんでいる方もおられますが、実際には書式は自由。「この人に会ってみたい」と選ばれることが最重要です。

そのために重要なポイントが、職務経歴末尾に「自己PR」なり「志望動機」なりのタイトルをつけて一文をしたためることだと思います。最終ページの3分の1程度に収めるイメージです。内容は単なる自己PRでも志望動機でもなく、「もしも自分が貴社に入社したら、これまでのキャリアをこう生かして、こんなふうに活躍していきたい」というリアリティーのあるイメージを強烈にアピールします。

募集ポジションや役割によりますが、想定される事業課題や、市場環境、競合環境や、顧客企業や利用者に求められていることなど、会社の置かれた状況を想定した上で、自分の経験や知識、スキルの中で生かせそうなことをまとめる形式です。

できればそこに、「なぜ自分はその仕事に取り組みたいのか?」という意思や思いを乗せて説明できると、さらに説得力は高まります。

あなた自身の心臓の鼓動が聴こえてくるような、「体温のある」職務経歴書で、ぜひほかの人とは一味違う存在感を示していただければと思います。自分の分身のような、本気の職務経歴書は、必ず磁力を発揮してくれるはずです。


※この記事は日経電子版「NIKKEI STYLE」に掲載されました。CR40を運営するルーセントドアーズ株式会社代表の黒田真行が執筆しています。

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