Hさん(●歳)は静岡県に在住で、県内での転職を考えていました。これまでに転職の経験はなく、とりあえず求人サイトに登録したところ、「スカウト」と書かれたメールが届きます。

「スカウト」と書かれた一斉メール

スカウトされたことに気を良くして内容を見ると、営業企画の仕事で年収も800万円と現在の700万円より高い額でした。会社の所在地も通勤できる範囲だったので「なかなか良さそうだ」と思い、早速応募してみました。

その後、とんとん拍子で採用が決まり、転職したHさん。

しかし、そんなHさんを待っていたのは、ブラック企業での過酷な業務の日々でした。

求人には、営業企画と書いてありましたが、「最初に営業を経験してもらってから営業企画に移ってもらうから」と言われます。働き始め、先輩や同僚に聞いてみると、過去に営業企画に移った人など一人もいないとのこと。

しかも、営業のノルマが高いため、すぐに人が辞めてしまうことも分かりました。とんでもない会社に入ってしまったと気づいたときは後の祭り。1カ月働いてみましたが、とても自分には務まらないと、次の転職先を急いで探さなければならない羽目に陥ってしまったのです。

そもそも、Hさんはスカウトメールを自分の経歴から実力が見込まれて、自分だけに届いた特別なメールだと思い込んでいたのですが、実は違っていて、求人サイトに新しく登録した人たちに一斉に送られるDM型のメールだったのです。

スカウトと書かれていたら、Hさんのように思うのが当然ですが、求人サイトによっては、このような実際にはスカウトでも何でもない一斉求人メールにスカウトと書いて届けるというちょっと悪質なサービスを行うケースもあるのです。

いくつかの求人サイトに登録し、1カ月も経てば、このようなスカウトメールが次々届きますから、それがスカウトでも何でもないことが分かるのですが、Hさんは初めての転職だったためすぐに飛びついてしまったというわけです。

また、静岡という地方だったため、求人数が少なかったことも、Hさんがスカウトメールに引っかかってしまった要因です。東京であれば、求人が多いため、スカウトメールが次々来ますが、静岡だったため他のスカウトメールが来ず、それが本当のスカウトメールだと思ってしまったのです。

ブラック企業を見分ける方法

同じように、「ヘッドハンター」を名乗る人からのメールをきっかけに転職をしたらブラック企業だったという人もいます。

ヘッドハンターは本来、企業側に立って、企業の要望に合った人を見つけて声をかけ、その人が転職を希望したら企業に紹介し、転職が決まれば高い成功報酬を受け取ります。つまり、ヘッドハンターが声をかけるのは、転職希望があるかどうかも分からない人たちです。

ところが、なぜか、求人サイトに登録すると、ヘッドハンターからメールが届くということがあるようです。これも、スカウト同様、偽のヘッドハントだと言えるでしょう。

求職者は、スカウトやヘッドハントだと言われると、自分の実力が見込まれて、特別な求人が紹介されたと思うため、ただ求人サイトで求人を掲載しているよりも多くの人が応募します。だから、こうした悪質なサービスを行う求人サイトも出てくるし、それを利用する企業も出てくるのです。

もちろん、その人が登録した経歴を企業が見て、その人だけに本当のスカウトメールを送るサービスを行っている求人サイトもあります。また、求人サイトに登録している人に、ヘッドハンターが接触することもあり得ますが、ごくごくまれな例でしょう。

求職者は、スカウトやヘッドハントという言葉に惑わされることなく、冷静に求人の内容やその企業を判断する必要があります。

また、営業企画という名で求人を行いながら、実は営業をやらせるブラック企業は後を絶ちません。営業募集では人が集まらないから、このような囮求人を出すのです。

こうしたブラック企業かどうかを見分ける方法としては、インターネット上にいくつか企業の評判などの口コミサイトがありますので、そこで社名を検索して口コミ情報を取集するという方法があります。

そこで、悪い評判がいくつも掲載されている企業なら、ブラック企業だと判断してもいいでしょう。

ただ、当たった上司との相性がたまたま悪く、それに対する個人的な恨みで会社の悪口を書いている場合などもあるので、口コミがすべて正しいとは限らないことは頭に入れておいてください。

企業も履歴書、職務経歴書の「裏取り」を行う

口コミサイトで検索しても出てこない企業の場合には、自分で判断するしかありません。面接時に、どういう仕事内容なのかはもちろん、Eさんのように「最初は営業で」などと言われても簡単にそれを了解しない、了解するなら何をどこまでやったら企画になれるのかなどの条件をしっかりと遠慮せずに聞くことが重要です。

求職者は、採用される側であり、立場が弱いのでいろいろ聞きづらいと思うかもしれませんが、聞かずに入って後悔したくなければ、気になることは入社前にきちんと粘り強く確認しておくことです。

求職者が企業のことを調べるように、企業も求職者のことを事前に調べています。「リファレンス」と言いますが、その人の前職の企業に電話やEメールで履歴書の内容にウソがないか、本当に営業課長だったかを確認する企業もあります。

また、企業が求職者に対して、前職での働きぶりを聞くために、前職の上司や同僚を2人ほど紹介してほしいと要望を出すこともあります。

求職者は前職の上司や同僚に連絡し、転職先の企業が自分の仕事について聞きたいと言っているので時間をつくってほしいとお願いすることになります。前の会社を喧嘩別れしていると、こうしたことができません。

また、探偵や興信所に依頼して、求職者の人物評価を行う企業もありますし、こうした求職者の履歴書、職務経歴書の裏づけ取りを専門に行う企業もあります。

まとめ

何が悪かったのか

「転職先がどういう企業なのか、しっかりと調べなかった」
「ヘッドハント」や「スカウト」という言葉に騙されてはいけない。

どうすればよかったのか

「口コミサイトのチェックなど、転職先の企業についてもっと詳しく知ろうとするべきだった」


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