Iさん(●歳)は、IT系企業の営業担当者でした。転職を希望して求人サイトに登録したり、人材紹介に登録したりしていましたが、すぐに転職したいというわけではなく、いい求人があったら転職したいという程度の、まったく急いでいない求職者でした。

予想外に激務だった沖縄のマネジメント職

いろいろな求人を見る中で、Iさんがいいなと思うようになったのが地方への転職です。Iさん自身は東京近郊の出身で、勤務先も東京都内でした。田舎でゆったりと子供を育てながら働くのも悪くないかなと思っていたところ、沖縄のコールセンターのマネジャー職の求人を見つけました。

家族に相談すると「いいんじゃない」と前向きな反応だったため、実際に応募したところ、転職が決まりました。学生時代に一人暮らしの経験もあったので、最初は単身赴任で様子を見てから家族を呼び寄せることにします。

ところが、沖縄に行って働き始めると、予想外の忙しさ。転職先の企業の本社は東京にあるため、毎日のようにスカイプを使った会議があり、報告書の作成もありました。

何より大変だったのが、現地のオペレーターの教育や管理です。沖縄はコールセンターが多くあるため、辞めた人の補充の求人広告を出しても人の奪い合いになっているため、なかなか採用できません。

そんなこんなで残業続きの日々となり、単身赴任のため生活も荒れ、●カ月後、退職を決意することになってしまったのです。

沖縄と言うと、あくせくせずに、のんびり海を見て暮らしているイメージがありますが、それは現地の人たちであって、東京から派遣されているマネジメント職は、そうした人たちをマネジメントしなくてはならないため、東京よりも逆に忙しくなるのです。

これは沖縄に限ったことではなく、熊本や宮崎なども、テレビショッピングなどのコールセンターが増えており、そのマネジメント職は東京から派遣されますが、その仕事内容は激務だったりするのです。

Iさんは、そんなことはまったく知らず、そうしたことをよく調べもせずに、沖縄の青い海のイメージだけで転職を決めてしまったのが失敗の原因でした。

コミュニティや環境が合わずに戻るケースも

転職業界では、自分の田舎に帰るのは「Uターン」、関係のない地方に行くのを「Iターン」、田舎の近くに帰るのを「Jターン」と呼びます。

こうした地方転職でうまくいかない理由として多いのは、「その地域のコミュニティと合わない」ことです。仕事上は特に問題がなかったにもかかわらず、奥さんが地域コミュニティに合わずにノイローゼになり、退職を余儀なくされ、東京近郊など、元の地域に戻ってまた転職活動を行う人もいます。

就農転職や漁業組合、森林組合などに入る転職は、その地域のコミュニティにどっぷりと浸かる必要があるため、自分も家族も合わないと長続きしません。一次産業への転職を考えている人には、この点を必ず考慮に入れるようアドバイスします。

地方は、どこも人口が減っており、かつ高齢化が進んでいます。少しでも若い人たちを呼び入れようと、空き家を低価格で借りられるようにしたり、田畑を無料で貸し出したりして、地方の行政機関は若い人たちの移住を推進しています。

そういった地方への移住・転職に魅力を感じる人もいると思いますが、田舎に行けば行くほど、生活習慣やコミュニティが独特なケースがあり、それが合わずに元の地域に戻る人たちもいるのです。

また、田舎だから生活コストは安いだろうと思って行くと、物流コストがかかっているために逆に値段が高かったり、競争がないため定価販売だったりと、実は生活費が高くなることもあります。

地方ということで述べてきましたが、関東の人が大阪や京都に、逆に、関西の人が東京に転職して、コミュニティや環境になじめず、うまくいかないこともあります。本人がなじめないこともあれば、家族がなじめないこともあります。

Iさんは、沖縄に転職することを家族に相談した際、喜ばれたようですが、地方への転職は家族に反対されることも多々あります。学校に通う子供がいれば、転校することになりますから嫌がる可能性がありますし、住み慣れた環境が変わることを嫌う人は多いものです。

地方転職を考える際には、こうした点も十分に考慮する必要があるでしょう。

急増する介護のための地方転職

最近、急激に増えているのが、介護のための転職です。田舎の親が体調を崩したり、認知症になったりして、最初は週末だけ田舎に帰っていたのが、次第にそれでは対応できなくなり、一緒に住むか、近隣に住まざるを得なくなって、現在の仕事を辞め、田舎での仕事を見つけて転職する人が増えています。

40代以上のミドル世代の親は、70代を超えてきていますから、こうした「介護転職」はますます増えていくことが予想されています。

中には、最初から転職活動をせず、数年間のことと割り切って「介護離職」する人もいますし、転職活動をしたものの田舎でいい仕事が見つからず、転職をあきらめる人もいます。

こうした人たちの多くは、介護していた親が亡くなると、田舎から東京などに戻り、再度転職をしています。介護のために田舎の企業に転職し、親が亡くなって戻ってきてまた転職する「介護ブーメラン転職」とでも呼ぶべき状況も生まれてきているのです。

そして、うつ病など、精神的な不調によって離職した人が、数年間療養し、復調して転職活動を行うときに、この働いていなかったブランク期間を「介護をしていた」と偽るケースも増えています。

数年間、働いていないブランク期間がある人に対して企業の採用は慎重になります。メンタルの問題で離職していた人の採用にも企業は慎重なため、それを正直に言うと採用されにくいという現実があるので、「介護のため3年間離職していた」と偽る求職者がいるのです。

メンタルの問題以外の理由で、数年間の働いていないブランク期間がある人も、同様に介護離職だったと偽る場合もあります。

こうした現状があるため、企業は「本当に介護による離職期間だったか」を調べるようになってきています。それと同時に、優秀な人材が介護のために離職するのを防ぐ「介護休暇」のような制度をつくる企業が増えています。

介護のために田舎に帰る新幹線代などの交通費を月何回分出すという制度をつくった企業もあります。

こうした田舎に戻らざるを得ない地方転職もあるのです。

まとめ

何が悪かったのか

「子育てがしやすいなど、地方転職をイメージだけで考えて決めてしまった」

どうすればよかったのか

「業務の内容をしっかりと確認しておくべきだった」


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