機械メーカーの営業職だったJさん(40歳)は、まったく畑違いの教育業界への転職が希望でした。理由を聞くと、人を育てる教育の仕事に関わりたいという思いが昔からあったので、節目となる年齢で挑戦してみたいとのことでした。

予想以上に難しかった教育研修の営業

Jさん自身の努力の甲斐もあり、転職先は比較的スムーズに決まりました。転職を決めたのは、企業の人材教育研修を行う会社の営業職。転職を決める前に、どういう営業スタイルが求められるのかもヒアリングし、自分がこれまで行ってきた営業とは、まったく違ったスキルや知識が求められることもよく理解していました。

機械メーカーの営業は、新規開拓はほとんどなく、既存の顧客との関係性を深めて、相手の要望を聞き、その要望に応えた製品をつくって販売することが仕事でした。

これに対して、教育研修の営業は、新規開拓のほうが多く、お客さまとなる企業はあらゆる業界で、企業規模も会う人も様々です。中小企業の社長もいれば、大企業の研修課長もいます。

こうしたことも理解したうえで、それでも教育の仕事に関わりたいという思いでJさんは転職を決めました。

転職後、Jさんは慣れない営業でしたが、一生懸命にがんばりました。しかし、なかなか契約がもらえません。私も何度か話を聞き、相談にのり、できる限りのアドバイスを行ったのですが、うまくいきませんでした。

何が難しかったのかと言えば、お客さまの課題を把握すること。お客さま企業の経営課題が何であり、組織課題がどこにあり、そのための人材強化の課題がどこにあるのかを把握しないと、適切な教育研修を提案できません。

しかも、こうした課題は企業によって千差万別で、教育研修の対象となる階層もいろいろ。業界も職種も幅広いため、多くの知識をもっていないと、課題すらなかなか理解できないのです。

Jさんも多くの本を読み、研修講師に内容について詳しい話を聞きに行くなど努力を重ねたのですが、それでも契約がとれませんでした。

実際の機械部品を見ながら、ここを5ミリ短くしてほしい、ここが壊れやすいから強化してほしいといった目に見えて分かりやすい要望を把握することに比べると、経営課題や教育研修の課題は漠然としているため、把握するのが思っていた以上に難しかったのです。

Jさんは、●年●カ月間がんばったのですが、結局、思うようには契約がとれず、退職することになってしまいました。

やりたい仕事であっても「適性なし」の現実

Jさんは人柄も良く、努力家でしたので、まったく違った営業である教育研修の営業であっても何とかできるようになるだろうと私も思っていたので、この結果は非常に残念なものでした。

昔から興味があって、あこがれていた教育業界への転職であり、業界についての勉強も、営業として身につけておくべき知識もある程度はあり、Jさんの求職者としての情報収集は十分でした。

これまでとの営業の違いも理解しての挑戦だったのですが、成果を出すことはできませんでした。残念ながら、教育研修の営業という仕事の適性がなかった、適性のミスマッチだったとしか言いようがありません。

そして、それはやってみないと本人にも分からない部分でもあります。

Jさんを採用した教育研修の企業の社長も、Jさんなら必ずいい営業担当者になってくれるだろうと判断して採用を決めましたし、教育研修の企業ですからJさんへの必要な研修ももちろん行っていました。

それでも、うまくいかない転職となってしまったのです。

Jさんの場合、同じ営業職と言っても、業界がまったく違うだけでなく、営業スタイルも、必要なスキルや知識もまったく違うものでした。言わば、これまでの営業方法をゼロリセットして、また一から学び直して、スキルや知識を身につけていくことが求められました。

これが思っていた以上に難しかったのだと思います。40歳という年齢やこれまでの経験、プライドなど、何が邪魔をしたのかは分かりませんが、ゼロリセットして一からやり直すまでの覚悟がJさんにあったかと言うと、そこまではなかったかもしれません。

ただ、Jさんのケースは、やはり適性のミスマッチだったのだと思います。人間ですから、どうしても合わない仕事というのはあります。それが、やりたい仕事であっても、適性がないということがあり得るのです。

まとめ

何が悪かったのか

「やりたい仕事ということで、それが本当に自分にできるのかという判断が甘かった」

どうすればよかったのか

「覚悟をもって、ゼロリセットするつもりで努力をするべきだった」


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