まず、当たり前の話ですが、ミドルの転職では、同業界、同職種への転職を希望する人が圧倒的多数です。自分がこれまでいた業界で得てきた知識なり、就いていた職で磨いてきたスキルなり、経験を転職後も活かそうと考えれば、至極自然なことでしょう。

したがって、まずは、同業界、同職種で転職できるかどうか、求人数がどれくらいあるのか、賃金相場はどれくらいなのかなどをまずは調べましょう。

やり方は簡単で、求人サイトに登録すれば様々な求人を見ることができるので、同業界、同職種の求人を検索して調べます。

ただ、業界や職種によっては、求人が少ない場合も多く、第2章の失敗事例のところで出てきたDさんのような部品メーカーの購買の求人などは、そうそうあるものではありません。しかも、年収1000万円以上となると、求人を見つけること自体が非常に難しく、その求人に応募して採用される確率は宝くじに当たるよりも低いかもしれません。

自分が働いてきた業界、職種の求人が少ないことが分かった場合の対処法はのちほど詳しく述べることにして、まずは同業界、同職種の転職の仕方について見ていきましょう。

同業界、同職種の求人数がある程度あり、転職の可能性がありそうだと判断したら、その業界や職種に強い求人サイトや人材紹介会社がないか探してみてください。

大手の求人サイトや人材紹介会社は、言わばデパートで、業界、職種、エリア、年齢などをすべて網羅しています。

これに対して、中小規模になると、デパート型もありますが、ある特定の業界専門、たとえば、IT業界専門、自動車業界専門などの求人サイトや人材紹介会社もあります。

また、人事や経理といったある特定の職種に特化した求人サイトや人材紹介会社もあれば、女性だけ、あるエリアだけ、ミドルなどのある世代だけを扱っている求人サイトや人材紹介会社もあります。もし、自分の業界、職種を専門にした、または強みがある求人サイトや人材紹介会社があれば、大手だけでなく、そうしたところにも登録しておくと、求人の幅が広がり、選択肢を増やすことができます。

「異業界」の「同職種」も狙い目

同業界、同職種への転職の次に考えたいのが、異業界の同職種への転職です。

経理や人事などは、専門的な知識やスキルを身につけると、異業界に行っても仕事の違いが比較的小さいため、そのまま通用します。

また営業も、ルート営業や既存顧客への営業が中心といった営業スタイルが同じであれば、業界が変わって売る商品やサービスが変わっても活躍できる可能性が十分にあります。

個人に対する営業の場合、顧客層が同じなら、業界、商品が変わっても活躍しやすいと言うこともできます。

たとえば、高級輸入車の営業から高級マンションの営業や富裕層相手の証券会社の営業への転職は、顧客層が同じ、あるいは近いため、同じ営業スキルが通用するケースが多いのです。どんな提案だったら富裕層の人たちが興味をもつのか、喜んで買ってくれるのかといった点は同じなため、転職しても活躍できます。

そして、隣接する異業界への転職を考えるのも1つの方法です。銀行や証券、生命保険、損害保険などは金融業界とひとくくりにされるように、隣接する異業界だと言えるでしょう。

製造業も、つくるものによって多種多様な業界がありますが、つくっているものは違っても、つくり方や売り方が似ている業界もあります。こうした観点から異業界の中でも、同業界に比較的近い異業界を見つけて転職先を探すこともできるのです。

「ポータブルスキル」とは何か?

では、同業界、同職種の求人があまりない、異業界、同職種の転職も難しそう、あるいは、そうした求人に応募したけれどもなかなか転職が決まらない場合には、どうすればいいのでしょうか。

こうした時の選択肢として考えてほしいのが「異業界、異職種」への転職です。

実は、異業界、異職種へ転職する人自体は、近年増えてきているといってよいと思います。最初にお話しした同業界、同職種への転職よりも、比率は増えてきています。

とはいえ、いきなり縁もゆかりもない業界で、今までと全く違う仕事を、40歳を過ぎてからやるというのは至難の業のように思われます。その際、どのような点がポイントになってくるのでしょうか。

ここで考えたいのが、「ポータブルスキル」という概念です。ポータブルスキルとは、その名の通り、ポータブル、持ち運びできるスキルのこと。これまでに磨いてきたスキルの中で、他業界に行っても役立つスキルがないかを考えます。

図表は、一般社団法人人材サービス産業協議会が考えるポータブルスキルの内容です。

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一般社団法人人材サービス産業協議会が考えるポータブルスキル

画像掲載元:http://dev-j-hr.jassa.jp/matching/

まず左側に「専門知識・専門技能」とあります。転職のときに武器になると考えられるのが、この専門知識・専門技能ですが、求職者の多くがこれだけしか見えていません。だから、同業界、同職種にこだわる人が多いのです。

そして、専門知識・専門技能しか見えていないのは、求人を出している企業の多くも同じです。「〇〇業界で3年以上の経験者」や「経理を3年以上経験した人」「〇〇資格保有者に限る」などの求人の条件が、それを表しています。

ですから、こうした専門知識・専門技能が必要不可欠である専門職は、求職者も転職しやすいですし、求人を出している企業も採用しやすいと言えます。

しかし、世の中には専門職とまでは言えない仕事のほうが多くあります。そこで、専門知識・専門技能以外のポータブルスキルという視点で考えられたのが右側です。

まず、ポータブルスキルを「仕事のし方」と「人との関わり方」の2つに大きく分けています。

「仕事のし方」を見ると、「成果をあげるために重要な行動」を、「課題を明らかにする」「計画を立てる」「実行する」の3つに分け、さらに、「現状の把握」「課題の設定方法」「計画の立て方」「実際の課題遂行」「状況への対応」の5つに分けて、それぞれの「職務遂行上、特に重要であるもの」を明記しています。

多くの仕事において重要と言われる「PDCAサイクル」の考え方に近く、それらのどこに、自分の強みがあるかを考えるのに役立ちます。

「人との関わり方」は、「対人マネジメントで重要なこと」を、「社外⇔社内」の軸と、「上司⇔部下」の軸の2軸で整理し、「社内対応(上司経営層)」「社外対応(顧客・パートナー)「部下マネジメント(評価や指導)」の3つに分け、それぞれの「職務遂行上、特に重要であるもの」を明記しています。

つまり、仕事の進め方や人との関わり方を通じて鍛えられたスキルは、ほかの業界やほかの職種でも活かせると考え、これらをポータブルスキルと呼んでいるのです。


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