人材紹介会社の見分け方・使い方

現在は、異業界、異職種の転職の場合、人材紹介会社などが介在することで、企業の求める真のスキルと、求職者のポータブルスキルがマッチングされる場合が多いですが、今後、こうした事例が増えて認知度が上がってくれば、求職者が自分のポータブルスキルを活かせる求人を自分で見つけることも可能になるでしょう。

ただ、人材紹介会社は多くの求人についてその詳しい内容を知っており、かつ多くの求職者のスキルを理解しているため、介在価値が高いことには変わりがありません。

自分のポータブルスキルを、まずは人材紹介会社に正しく理解してもらうことが、自分が活躍できる転職につながります。

自分のポータブルスキルが何か分からないという人も、人材紹介会社に対して自分がこれまでやってきた仕事内容を詳しく説明すれば、それが何なのかが分かるかもしれません。

たとえば、「勤めていた企業が同族企業で、経営者や役員に対する説明が非常に重要だったので、そういった上位者への説明や根回しには特段の気を使っていた」といったポータブルスキルかどうか分からないことであっても、人材紹介会社に話すことで、ポータブルスキルが何かを一緒に考えてもらうことができます。

もちろん、すべての人材紹介会社がこうした相談にのってくれるとは限りません。そもそも、ポータブルスキルが何か分かっていなかったり、その重要性を理解していなかったりする人材紹介会社もあります。35歳までの転職では、ポータブルスキルが何かなど考える必要がないからです。

ですから、こうした意味でも転職の際は、いくつかの人材紹介会社に登録して、実際に担当者に会って話してみて、自分に合った人材紹介会社、担当者を見つけるようにしましょう。

そのとき、どこか1つに絞る必要はなく、いくつか複数の人材紹介会社と付き合っていけばいいと思います。

人材紹介会社は、人材を企業に紹介して、企業からお金をもらうビジネスモデルですから、多くの人材紹介会社に登録して担当者に会っても、求職者はお金がかかることはありません。

数社会ってみれば、親身になって相談にのってくれる会社か、そうでない会社かは分かるでしょう。なかには、「この求人にすぐに応募しましょう」と強引に応募を迫ったり、急かしたり、他の人材会社の悪口を言ったりする人もいます。

本当に人気が高い求人で、すぐに応募しないと締め切られてしまうケースもありますから、一概に急がせるのが悪いわけではありませんが、それが親身になってのことなのか、単に自分のノルマのためなのか、こうした点は自分で判断する必要があります。

ミドルの転職が増えていると言っても、ミドルの転職を専門にしている人材紹介会社はまだ少ないのが現状で、「ミドルに強い」とうたっていても、ミドル×高収入のハイレベル層を得意としている人材紹介会社が圧倒的多数です。

こうしたハイレベル層を専門にしている人材紹介会社は、そうでないミドル層の求職者には、まず会いません。会う時間がもったいなからです。裏を返せば、登録して、担当者が会ってくれるということは、紹介してもらえる可能性が多少なりともあるということです。

ちなみに、人材紹介会社は、人材を企業に紹介し、その人の入社が確定してはじめてお金がもらえます。だいたい年収の30%が相場で、年収500万円の人であれば、入社が決まれば150万円もらえます。

最初に、同業界、同職種での転職を目指すときには、その業界や職種に強い人材紹介会社や求人サイトに登録したほうが効率が良く、異業界、異職種の転職を目指す段階になったら、いろいろな業界、いろいろな職種を扱っている総合型の人材紹介会社に登録したほうが選択肢を増やせるでしょう。

事例12)「応募者を増やす」スキルで大学でも大活躍のMさん

求人広告の製作から大学のキャリアセンター長へ

ここでまた、異業界、異職種へ転職して活躍している事例を紹介しましょう。

Mさん(●歳)は、求人広告企業で制作の仕事を約●年間やっていたのですが、大学のキャリアセンター長に転職しました。

キャリアセンターは、ご存知の通り、学生の就職支援をするところですが、就職率の高さが大学の人気に大きく影響するため、学生を集めるための部署でもあります。つまり、キャリアセンター長は、学生の就職率を上げるのが仕事であるとともに、学生となる受験生を集めるのも仕事という大学の要職なのです。

では、Mさんのどのようなポータブルスキルが、大学のキャリアセンター長の仕事に活かされたのでしょうか。

求人広告は、企業から採用したい人材像を聞き、そうした人たちが応募したくなる広告をつくるのが仕事です。求人ラブレターの代筆屋みたいな商売なのです。

ただ、人材紹介とは違い、求職者と会うことはないため、企業が採用したいと言っている人材像に近い人たちは想像するしかなく、そうした人たちがどんな一文を読んだら応募したくなるかも自分なりに考えて想像するしかありません。

「こういうターゲット像だから、こういうPRが心に響くのではないか」といった仮説を立て、それを求人広告に落とし込みます。それらが成功すれば狙った通りの人たちが応募してきて企業から喜ばれますし、逆に失敗すると、「応募者が少ない」「採用したい人がいない」などと言われて怒られます。

Mさんは、求人広告で得た「企業がどんな人材をほしがっているのか」という知識を就職活動中の学生の支援に役立てる一方、求人広告をつくることで磨かれたターゲティングやメッセージングなどのスキルを、受験生を集める学生募集の広告やパンフレット、ウェブサイトの作成に活用することができ、大学のキャリアセンター長として大活躍しているのです。

「抽象の梯子」を上がると新世界が見える

Mさんの求人広告で得た知識やスキルは、ポータブルスキルというよりは、専門知識や専門技能ではないかと思った人もいるでしょう。それは、その通りなのですが、それらを違った業界、職種で活かしている点では、ポータブルスキルとも言えます。

また、「求人広告会社の製作者」と「大学のキャリアセンター長」と並べると、まったく違う仕事のようですが、就職や転職を企業の側に立って支援するのが求人広告、就職したい学生を支援するのがキャリアセンターだと考えると、コインの裏表の関係だと言うこともできます。

さらに、求人広告によって求職者の応募を増やすのと、大学の魅力を伝えて学生となる受験生を増やすのは、意外にも似た仕事であることが分かるでしょう。

求人広告の制作スキルと狭くとらえるのではなく、ターゲティングやメッセージングなどのスキルと広くとらえ直すと、それらを活用できそうな業界や職種の幅を広げることができます。

私はこうしたスキルのとらえ直しのことを、「抽象の梯子を上がる」と言っています。抽象度を上げることで、汎用性を広げることができるのです。

分かりやすく言うと、「ミカン」や「バナナ」の抽象度を一段上げると「果物」になり、さらにもう一段上げると「食べ物」になります。

実はかつてのリクルート時代の採用チームは、この抽象の梯子を使って、「伊藤忠商事に入社したい」と言っている学生を「リクルートに入りたい」に変えていました。

どういうことか、説明しましょう。まず、「何で伊藤忠商事に入りたいの?」と聞きます。「商社の仕事に魅力を感じているから」と答えたとすると、「商社の仕事のどんなところに魅力を感じているの?」とさらに聞きます。「世界を股にかけて仕事をしているところ」と答えたとしたら、「何だ。それならリクルートでもできるよ」と言って海外事業の魅力について説明すると、学生のリクルートに対する見方が大きく変わり、説明を聞き終わる頃には「伊藤忠商事に入りたい」から「リクルートに入りたい」に変わっているというわけです。

伊藤忠商事から商社へ、抽象の階段を一段上がり、商社から世界を股にかける仕事へとまた抽象の階段を一段上がると、同じような仕事はリクルートでもできると言えるようになるのです。

専門スキルも同様に、抽象の梯子を上げて考えると、汎用性が高まり、異業界や異職種でも使えるポータブルスキルになります。

また、自分のポータブルスキルが何かを考える際にも、まずは具体的な事例で考えますが、徐々に抽象度を上げて考えるようにすることで汎用性が高まり、転職先の幅が広がります。

抽象の梯子を上がることで、転職先の選択肢が広がり、新しい世界が見えてくるのです。


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