「異業界」「異職種」への転職をするためにミドルの求職者は何をすればいいのか、具体的に考えていきましょう。もちろん、「同業界」「同職種」への転職にも役立つポイントも数多く紹介していきますので、ご安心ください。

まずやるべきことは、自分のキャリアの「棚卸し」です。求職者の多くは、職務経歴書に何を強調して書けばいいのか、面接で自分のどこをアピールすればいいのか分からないと言います。

実際、私もこの手の相談をよく受けるのですが、そのときに確認するのが、キャリアの棚卸しをしたかどうかです。

職務経歴書を書くにあたって、「〇〇年入社、△△部□□課配属~」といった表面的な職務経歴を入社から現在まで、ずらずらと書くことは多くの人がやっています。しかし、それだけでは、キャリアの表面をなぞっただけに過ぎず、棚卸しをしたことにはなりません。

キャリアの棚卸しをするためには、次の3つのことを思い出して書き出しておく必要があるのです。

  1. 「したこと」だけでなく「学んだこと」
  2. 「成果」だけでなく「プロセス」
  3. 「マネジメント実績」だけでなく「マネジメントの型」

「何をしたか」だけではなく、それをやったことで「何を学んだのか」を考えて書き出します。担当した業務やプロジェクトの内容に加えて、その経験を通じて学んだこと、身につけた考え方やスキルなども書きましょう。

次に、「売上1000万円以上」「10%コストダウンに成功」といった成果だけでなく、それを達成するために「どんな戦略を立てたか」「どんな試行錯誤を繰り返したのか」「どんな失敗をし、それをどう乗り越えたのか」といったプロセスについても思い出して書き出しておきます。

ミドルの転職では、まず間違いなくマネジメントについても聞かれますので、マネジメントを行った人数やチームの実績だけでなく、「メンバーに対して、どのようなコミュニケーションのとり方をしたのか」「マネジメントの型はどういったものだったのか」「マネジメントを行うにあたって、特に注意を払った点、心掛けた点は何か」といったことも考えて書いておきます。

さらに、その時々の感情や次につながる気づきや学びなども書き留めておくと、面接でよりリアルで、かつ相手が納得する話をすることができるかもしれません。

また、キャリアの棚卸しをする中で、自分の強みやポータブルスキルが明確になることもあります。

こうしたキャリアの棚卸しは、本来は転職するかどうかに関係なく、3年ごとにやっておくべきことだと私は考えています。棚卸しをすることで自分の課題(弱点)を見つけることができるとともに、強みを知ることができ、その強みをさらに強化することにつなげることができるからです。

企業が「知りたいこと」は何か?

キャリアの棚卸しや自己分析を行い、自分の強みやポータブルスキルが明確になると、それを職務経歴書や面接で強調したくなりますが、いったん冷静になって相手の立場に立って考えてみることが重要です。

たとえば、求職者は採用してもらおうと「自分の過去」の仕事内容や実績を強調しますが、採用する企業は、「確かに実績はあるようだが、うちでも同じように高い実績をあげられるだろうか」と考えています。

2章でも述べましたが、企業はその人の過去の実績を買うわけではなく、「この人は、私たちの会社で何ができるだろうか」という未来を予測するために過去の実績を見ているに過ぎません。

つまり、企業が確かめたいのは、「成果の再現性」なのです。

外資系企業では、昇格を判断する際に、「コンピテンシー・インタビュー(適正面接)」を行います。これは、その人がこれまで取り組んできたことやそのプロセスと成果を聞くことで、昇格後も同様の成果を高い確率で再現できるか、これまで以上の成果を出すことができそうかをチェックするための面接で、これによって昇格を判断します。

転職の面接も、これと同じだと言えるでしょう。ですから、求職者は単に自分の強みや実績を相手企業に伝えるだけではダメで、「入社後に何ができるのか、何ができそうなのか」を、相手を納得させられるだけの材料を準備してアピールすることが大事なのです。

「私を採用しなかったら損ですよ」「私を採用したらこんなに得しますよ」ということをいかに伝えるかが重要だということです。

たとえば、新しい人事制度を導入するために人事担当者の求人を出している企業があったとしましょう。その求人案内をよく読むと、「外部コンサルタントなども活用して」という一文がありました。

新しい人事制度を導入する場合、すべてを自前で行おうとする企業もあれば、外部の専門家をうまく使って導入しようとする企業もあります。求人を出している企業は後者なのでしょう。

そこで、自分がこれまでの企業で行ってきた外部のコンサルタントと協力して人事制度や給与制度、評価制度を改革した経験をアピールすれば、「この人は新しい人事制度の導入経験はないが、外部コンサルタントとの人脈もあるし、一緒に制度の改革を行った実績もあるから、うまくやってくれそうだ」という評価をもらえるかもしれません。

もし、この企業の求人に、自前主義の企業で人事を担当していた人が応募し、「私は自分たちだけで新しい人事制度を導入した実績があります」とアピールしたらどうなるでしょうか。

ほかに良い人がいなければ採用される可能性がないとは言いませんが、おそらく「この人は外部コンサルタントと協力して仕事を進めた経験はないし、何でも自分でやろうとするからうちの仕事のやり方には合わなそうだな」といった評価になるだろうと思います。

つまり、成果の再現性がないだろうと判断されてしまうのです。

企業が「求めているもの」は何か?

自分の強みであろうと、専門知識・技能であろうと、ポータブルスキルであろうと、万能なわけではありません。求人を出している企業が求めているものと、それらが「合致」して初めて評価されます。

ミドルの転職では、この合致こそが何より重要だということを覚えておいてください。

このことを理解せずに、自己中心的な自己PRをしても、相手には何も響きません。

「私の実績は、あなたの企業でも再現性があり、こういった成果を出すことができると考えています」ということが言えることが大切なのです。

同業界、同職種への転職では、求職者もこうしたことが比較的言いやすいですし、求人を出している企業も理解しやすいのですが、異業界、異職種への転職となると、成果の再現性を伝えるために求職者にはひと工夫した自己PRが求められます。

そのためには、求人サイトなどに掲載されている求人情報の内容をしっかりと読み込み、新しいエリアへの進出による増員なのか、欠員の補充なのかなど、「その企業が何を行いたいための求人なのか」を理解しておくことが大事になります。

人材紹介会社からの紹介であれば、「その企業が何を行いたいための求人なのか」を担当者に質問し、よく理解しておきましょう。

そのうえで、自分のどの強み、どの専門知識や技能、どのポータブルスキルをアピールするのが最適か、それを使って何ができるのか、できると言える根拠は何かと言ったことを考えていきます。

身につけるべきは「大人の転職作法」

そして、求人を出している企業のホームページは、くまなく目を通しておきます。

社長のあいさつ、企業理念やビジョン、商品やサービスの説明、業績の推移、会社の歴史などを読んでおくことで、その企業の文化や風土、考え方や大切にしているものなどが理解できます。

採用情報が掲載されていれば、自分が応募する以外の求人情報にも目を通すことで、「何を行いたいための求人なのか」がよりはっきりと見えてくるかもしれません。

さらに、同業他社、いわゆる競合企業数社のホームページにも目を通しておけば、求人を出している企業の競争優位点や業界でのポジション、強み弱みなども分かるでしょう。

自分をよく知ってもらいたいと思うなら、まずは相手のことをよく知ることが大切なのです。

求人を出している企業が何を行いたいのか、求人の目的が求人情報だけでは分からない場合でも、こうした情報を集めれば、「こういう目的のための求人なのではないか」という仮説を立てることができます。

その仮説が当たっているかどうかは分かりませんが、仮説をもって面接に行けば、当たらずとも遠からずで、良い結果につながる可能性は間違いなく高まります。

「ホームページを拝見したところ、御社はこうした点が強みで、今後こういう戦略で業績を拡大していこうと考えられているのではないかと、私なりに勝手に考えてみました。間違っていたらすみません」

こうしたことを面接で言われたら、企業も「公開情報を見て、そこまで考えてくれているのか」と思い、仮に間違っていたとしても、好感をもたれるのではないでしょうか。

「私はこれとこれをやってきました。採用してください。給料はいくらほしいです」では、子供の転職。10年以上の社会経験があるミドルの転職なのですから、こうした大人としての転職作法も身につけておくべきでしょう。


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