意外に思われるかもしれませんが、退職する本人が明確に退職理由を把握しないまま会社を辞めてしまうという現象も多々あります。

実際には、「この会社にいてもキャリアアップが望めない」とか、「仕事内容が自分に合っていない」などと表向きは言葉にしていても、内実は、退職する理由を明確に特定できていないというケースです。

会社を辞める、というきわめて重要な意思決定なのに、なぜこういうことが発生してしまうのでしょうか?

私が過去に出会った方々のケースでは、以下のような事例がありました。

  • なんとなく仕事が面白くない、だから成果が出せない
  • 社風や価値観が合わない、だから周囲から浮いてしまう
  • もやもやとした将来不安がある、だからキャリアにも不安が募る

上記の方々に共通するのは、「この会社も悪くはないかもしれないが、私にもっとふさわしい働き場所がどこかにあるのではないかと常に考えている人」、つまり、ここではない”どこかに、本来自分が行くべき場所があるのではないか“という思いです。

この「青い鳥症候群」と呼んでもいいマインドが、目的のない転職を繰り返すジョブホッパーを生み出す元凶の一つであると考えてます。

こういうケースの場合、退職理由があいまいで、明快に語り切れないため、人事の方もそれを一瞬で見抜いてしまいます。この点においては、いくら学歴が高くても、前職企業が知名度の高い会社であったとしても、こういうケースで希望の転職先に合格するといいうことはほぼありえないと考えたほうがいいと思います。

仕事探しにおいて、一番大切なことは「どういう会社、どんな仕事であれば、自分が生き生きと働いていけるか」ということです。退職をする際に、生き生きと働くために足りない課題が明確でなければ、次の場所を探す手がかりがないということになってしまいます。漠然とした不満とか、もやもやとした不安だけで退職することは、キャリアの迷子になってしまうリスクを極大化してしまいます。

決して、あいまいな理由での退職をしないことをお勧めしたいと思います。

「辞めなければよかった」と後悔する人の共通点

いうまでもないことですが、会社を辞めた人が全員ハッピーな状況になっているわけではありません。「こんなことなら前の会社を辞めなければよかった」という人も、一定数存在します。いくつかの典型的なタイプをご紹介します。

① 市場判断楽観型

「会社を辞めて仕事を探し始めても、なんとかなるだろう」

「人手不足、売り手市場と騒がれているくらいだから、いくらでも仕事があるはずだ」

という考え方で、突然会社を辞めてしまったり、転職活動を始めたりするタイプです。自分自身のポジショニングや経験、スキル、市場価値などをあまり考えずに動き始めるのだから、情報不足、準備不足になることは必至です。結果的に、「求人はあるが、自分のやりたい仕事の求人はそんなにないこと」や「自分の経験に価値を感じてくれる会社が予想以上に少ないこと」に後から気がつくことになります。しかすすでに後の祭り。

いつの時代も、大きな決断には情報と戦略が欠かせないというのは、やはり原理原則だと言えます。

② 自己評価過剰型

情報不足という点では、①と似ていますが、自己評価が過剰なぶんだけ、後悔も大きくなりやすいのがこのタイプです。

退職してから転職先を探す際のモノサシは、「前職よりいい条件、前職よりやりたい仕事、前職より有名な会社」。自分のスキルが必要とされていないことがわかると、自分の実力を理解しない企業が悪いとばかりに不貞腐れてしまいがちです。希望企業がダメなら、二番手、三番手企業へと応募先を変えていくことになりますが、こういう場合、往々にして業種や職域ではなく、会社の知名度や企業規模を重視して、最初の志望企業に近い社格(でも異業種)に応募する傾向があります。しかし、最初の志望企業よりも経験スキルのマッチ度が下がるので、それらが遠回りになるだけで結局必要以上に不採用企業数を増やしてしまうということになりかねません。

③ 不満離職先行型

もうひとつは「不満に耐えられなくなって、まず会社を辞めてしまった」というパターンです。精神的、肉体的に不調をきたすような会社の場合は、「まず辞める」という判断は正しいこともあるので、一概には言えないのですが、「例えば上司と感情的に言い争いになって、カッとなって辞表をたたきつけた」というような一時的な感情の高まりや、瞬間的な嫌悪感から会社を辞めてしまった場合、冷静になって後悔するというケースは少なくありません。

「処遇も仕事の進め方も人間関係も、前職の会社のほうが全然ましだった。。」

「売り言葉に買い言葉で辞めることになったが、あのときさっと謝罪しておけばよかった」というような後悔は、そのイベントが起こってしまった後からは覆せません。

ほかにも多様なタイプがありますが、出現率が高いものを共有させていただきました。言うまでもないことですが「辞めなければよかった」と思う事態は、本人にとっても、送り出し企業、受け入れ企業にとっても、誰にとってもハッピーなものではありません。

特に大企業で働いていた方、それも長期間、同じ会社にいた方ほど、保護膜が分厚くなっているため、外界と隔絶され、情報不足になってしまう傾向が強くなります。ぜひ、この点に留意して、後悔のないキャリア選択をしていただければと強く思います。


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