「銀行員=金融のプロ」ではない? 転職で成功する銀行員、失敗する銀行員

銀行が守ってきた出向・転籍という人員循環システム自体、崩壊しつつあると言われている。つまり、銀行はこれまでのように「終身雇用」や「出世」というニンジンをぶら下げられなくなる。となれば、将来を危ぶんで、転職を考える銀行員が増えるのは当然の流れだろう。

ではその時に、どういう銀行員が転職マーケットで評価されるのか。

パーソルキャリアが運営する転職サイト「DODA(デューダ)」の大浦征也編集長によれば、メガバンク出身者は転職マーケットでは概して人気だという。

「新卒時点でそれなりの競争を勝ち上がってきているので、ベースのポテンシャルが高い。体育会系な組織文化の中で目標をきっちり達成する力が鍛えられている。最低限の財務経営の知識を持ち、中小企業の経営者とも対等に話ができるだけのコミュ力があるというのが高評価の理由です」

一方で、地銀や信金・信組の出身になると、評価にバラつきが出てくる。新卒時に「地元から近いところ」という要素で選んでいる人が多く、転職市場では、実際は違ったとしても「そういったメンタリティーを持っている」という先入観で見られがち。また、顧客層の違いもあり、複雑性の高い融資経験や財務分析力が乏しいと見られるケースも。なかなか地道な営業能力以外を評価してもらいにくい実態があるという。

しかしメガバンク出身だからといって、安心はできない。大浦さんによれば、ポテンシャルだけで売り込めるのは30歳前後までだ。

「40歳を超えてくると独自の人脈やマネジメント経験、または、専門性の高い技術や能力がないと、外部マーケットに出ても厳しい」大浦さん)

元「リクナビNEXT」編集長で、現在ミドル世代の転職を支援するルーセントドアーズ社長、黒田真行さんも「相談に来るミドル層の7~8割は、慣れないキャリア探しで迷走している」と語る。

「転職活動で戸惑う人ほど、転職先に求める条件が厳しかったりします。『年収1千万円以下や転勤はNG。やってきた業務が生かせる分野以外は考えにくい』などと狭めすぎると、候補企業がほとんどなくなってしまいます。大企業の風土に長くいた人ほど、中小企業やベンチャーの相場観がわからないので、そのまま外に出てしまうと非常に危険。まずは会社に残りながら外部の情報を集めるなど準備をしたほうがいい」(黒田さん)

さらに迷走を深めてしまうのは、自分の市場価値を客観的に測定できずに、自己の強み・弱みを勘違いしたまま突っ走ってしまう人。何十社と応募をしても書類選考すら通過できず、失業期間だけが長引いてしまうケースもあるという。

逆にミドルでも成功するのは、これまでのキャリアを棚卸しし、自分にとって大事なこと、やりたいこと、成し遂げたい仕事がはっきりしている人。そのために学び直せる人。再出発する時点でいったんは年収が下がることを受け入れながら、実績を高めて前職以上の年収を目指す人。いま銀行内で悶々としている人に、黒田さんはこうアドバイスする。

「営業でも財務でも自分の持っている知識・スキルに対して、外の会社だったら、いくら払えるか、自分を商品だと思って冷静に値札をつけるところから始めてみてください。いくつになっても自分の付加価値は高められると信じてほしい」

銀行員=金融のプロという思い込みにも要注意だ。34歳の元メガバンクの男性は、法人営業でノルマの数倍の金額を達成。行内でも誰もが認めるエリートコースを歩んでいた。しかし転職活動をする中で、意外に自分に専門性がないことに気付いたと話す。

「銀行として貸す側のロジックはわかっても、事業会社側が借りるための細かいノウハウはわからない。銀行マンは決算書を読み解くのは得意ですが、事業会社の決算をきっちり締められる人は少ない」

ただ、この男性は銀行のキャリアの中で、自分の「成し遂げたいこと」を見つけていた。そこにこだわってベンチャーに転職。年収はほぼ半減したが後悔はしていない。

「今になってみれば、自分は銀行員時代、もらい過ぎていたんだなとつくづく思います。20代はポテンシャルで買ってもらえても、30歳を過ぎれば専門性を問われる。『ポテンシャルはありますけど、専門性はないです』という40歳に、普通の会社は1200万円なんて出さないですからね」


※この記事はAERA 2018年1月22日号に掲載されました。CR40を運営するルーセントドアーズ株式会社代表の黒田真行のコメントが掲載されています。

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