がむしゃらに仕事にまい進した20代、リーダーシップを発揮しながら成功体験を積み上げた30代を経て、40歳や45歳というタイミングで、過去のキャリアを一度振り返り、今後の働き方をしっかり考えたいという方が増えています。

会社の業績不振やリストラなどマイナスなきっかけとは無関係に、キャリアの見直しをするには、やはりそれなりの理由があるようです。仕事人生の残りは20年から25年。後悔しないために、いま取り組むべきことは何なのでしょうか。

キャリアを自分でコントロールできているか

リクルートワークス研究所がことし3月に発表した「人生100年時代のライフキャリア」という研究リポートでは、キャリア・オーナーシップというキーワードが語られています。

「自分が自らのキャリアの主人公であることを自覚し、望ましい状況を維持するために行動すること」という定義です。日本の雇用構造では、この観点を育てることが難しく、実に90%以上の人が、キャリア・オーナーシップを持てていないと指摘されています。

また、「仕事上で専門性を持っている」と自覚している人の比率が、40代で20.2%、50代になっても37.2%にすぎず、人事異動や分業が継続することで、キャリアが散漫に広がり続け、逆にキャリアの深化や自己学習による成長が阻害されているといいます。

エンジニアのキャリア支援をするアドバイザーの以下のコメントが紹介されています。

「自分が何をやっているのかあまり話せない、言語化できない人がいます。自分の仕事が最終製品のどこに寄与しているのかがわかっていないんです。こういう人は厳しいですね」

「自分の仕事が見えてないですね。分業化されて、そこしか見ていない。研究職は、わかりやすい成果がないので言語化できない。自分の立ち位置やスキルを俯瞰(ふかん)することができていない」

実際、エンジニアに限らず、営業や管理部門にも、自分自身の仕事の全体像が見えていないという方は多数います。転職相談の場で経歴の質問をすると、担当してこられたタスクの話になってしまい、解決した課題や任されたミッションの全体像が見えないことはしばしばあります。

「40歳以上、転職経験なし、社外を知らず」が危険

「1社にいて40代、50代になってしまった男性の9割は、厳しい。危機感もない。出世している人が、かえって危ない」

「人生100年時代のライフキャリア」のリポートでは、きわめて簡潔にそう指摘されています。40代を超えても、ひとつの会社に長く所属し社外との接点が少ないと、勤務先の価値規範を無意識のうちに体に染み込ませてしまいやすく、自分自身の市場価値や相場観を正しく認識できなくなる可能性が高くなるといいます。自身の職業能力を過大視してしまうこともあるし、自身が持っている市場価値に気づいていない、ということも起きると指摘されています。

さらに興味深いのは、このような状況に陥っている人ほど、仕事に過度に傾注しているという共通点があるということです。キャリアアドバイザーによるコメントも手厳しいものになっています。

「仕事以外の世界を知らないですね。言われるままにまじめに忙しく働き、ほかのことをしている時間がない。インプットの時間もない。海外経験などしていても、視野は開かれないんです」

「この会社で頑張っていけば大丈夫、と思って入社しているので、仕事と並行して何かをしているという人は少ないですね」

このような事態を避けるために、何ができるのでしょうか。事例をもとに探ってみましょう。

残りの仕事人生をゼロリセットで考える

40歳からのキャリアを考える場合、エンジニアとして高付加価値の技術をお持ちの方や、新規株式公開(IPO)のスペシャリストとして多数のベンチャー企業から最高財務責任者(CFO)のスカウトを受けている方などを除けば、10年後の自分自身がどんな仕事をしているか思い描くことすら困難かもしれません。

40歳だとすると、あと25年。45歳だとしても、あと20年。それだけの期間のキャリアをどう考え、どう設計していくのか、このタイミングで考えておくことは妥当だと思います。

1.仕事観の確認

自分なりに納得できるキャリアを形成している方に共通する一つのポイントは、「自分は何のために働くのか」という仕事観、価値観が明確に言語化されているということです。「家族か」「一緒に働く人との共感性か」「取り組む仕事が世の中に生み出す価値か」「自分が必要とされ期待され続ける状態か」「自分の老後の安心か」など、その答えは人それぞれ、自分自身の中にしかありません。

仕事を通じて何を得ることが最も重要なのかが決まると、何が重要でないのかという「捨てること」も明確になります。捨ててもいいことが見えてこないうちは、何を得たいかが見極めきれていないということかもしれません。また、「自分はこういうことしかできない」「今さら未経験のことは無理」「仕事とはこういうものだ」といった決めつけや思い込みが少ないことも重要なポイントかもしれません。

2.自己学習

先日、転職をお手伝いした56歳の方は、中堅商社の営業部長から、小さな機械工場の工場長という百八十度違う新天地に就職されました。業界も初めてで、当然、生産管理などの知識はありませんが、新しいことを少しずつでも覚えていきたいという意欲は明確にお持ちで、そのスタンスとマネジメント経験が買われての転職でした。

この方同様、50代を超えて、希望の転職が実現している方に顕著な傾向ですが、年齢と無関係に自分の可能性を広げていける方に共通する最大のポイントは、「いくつになっても新しいことを吸収していける力」です。「記憶力が低下しているから無理だ」というふうにおっしゃる方も多いのですが、実際には「失敗したら恥ずかしい」という思いが邪魔しているのかもしれません。実態のないプライドが、一番厄介な壁になることは間違いなさそうです。

3.未来から振り返って後悔しない選択を

単刀直入に「どうやれば転職に成功できますか」という質問をいただくことも多いのですが、私自身、キャリアや転職には成功も失敗もないと確信しています。自分自身が納得でき、後悔しない人生を送れるかどうかが最も重要です。いつかどこかで仕事そのものから引退する瞬間に、「こういう仕事人生を送ってきてよかった」と思えること、そのときに、わずかな後悔もしないような選択をし続けること――その連続こそがあなたのキャリアを充実させることにつながると考えています。

誰もあなたの代わりにその意思決定をすることはできません。ぜひ、自分のために、考えられるときに考え抜いていただきたいと思います。

※この記事は日経電子版「NIKKEI STYLE」に掲載されました。CR40を運営するルーセントドアーズ株式会社代表の黒田真行が執筆しています。


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