【ミドル世代転職の実状】「転職してもいい人」「後悔する人」は何が違うのか?

誰もが会社を辞めるという選択肢を考慮すべき時代。とはいえ、言うまでもなく、安易な転職をすれば後悔することに。また、「35歳限界説はなくなった」「40代の求人が増えた」といった風潮を安易に信じ込むのも危険だという。多くの事例を見てきたミドル世代専門転職コンサルタントの黒田真行氏に、ミドル世代の転職事情と、「転職してもいい人」を、転職に向けてのステップとともに解説いただいた。

ミドル世代の求人は本当に増えているか?まず現状を知る

どの時代も、転職をしたい人は一定数存在しています。「今すぐ」もしくは「いつかは」の温度差はあれ、だいたい100人中20人、つまり2割のビジネスマンがなんらかのかたちで転職を意識しています。そして、実際に転職活動をしている人は100人中5人程度です。

さてこの転職検討者が、実際に転職を実現できるかというと、その成否の確率は市場の求人数によって変わります。転職したい人の数がほぼ一定なのに対し、こちらは景気の動向によって大きく上下します。好況なら求人数は増え、不況なら減少します。

では現在はというと、昨年10月時点で有効求人倍率は1.55倍と、バブル期を超える高水準。リーマンショック直後の2009年に0.42倍となったのを「底」に、その後はずっと右肩上がりです。ミドル世代の転職者も増えていて、45~54歳の転職者数が3年間で10万人も増加した、という報道もあります。

しかし、だからといって「すべてのミドル世代にとって転職のチャンス!」とみるのは早計。

まず求人数に関して言えば、リーマンショックから脱却した増加トレンドが始まって今年は10年目を迎えます。ここ40年を振り返ると、10年も上り調子が続いたのは今回が初めて。長く上がり続けたぶん、今後、いったん下がり始めたら、下降期間が長くなる恐れもあるとみています。

加えてミドルの転職市場において、この10年で数字が伸びたのは確かですが、実際は、20代、30代のほうがもっと急激に伸びており、その老若差はむしろ以前よりも開いています。

「35歳限界説」はなくなっていない!?

35歳を超えると、一気に求人数が減るという「35歳限界説」――この傾向は近年の人手不足により消滅した、と主張する人もいます。

ただ、データを詳しく見ていくと、35歳を境に求人数が半減する状況に変わりはないことがわかります。そして、40歳でまた半減、45歳でさらに半減します。

これは日本特有の風潮と言えます。欧米ではキャリアを積んだミドルのほうが若者より転職に有利なのですが、日本では逆の現象が起こります。

そこにはさまざまな理由があります。たとえば、長幼の序が重視される社会において、採用側のマネジャーが年上の部下に抵抗感を抱きがちなこと。また、年功序列システムが長らく続いた影響で、人件費が高くつくと思われがちなこと。さらには「前職の習慣から抜けられない」「こだわりが強い」などのマイナスイメージもついて回ります。

もちろん一方で、ヘッドハンティングなどによりキャリアアップを果たした人がいるのも事実です。日本の正社員の転職者数は景気によって上下あるものの、だいたい年間150万人。そこには、さまざまなルートがあります。内訳は、求人広告経由が3割、人材紹介が1割、縁故が2.5割、ハローワークが2.5割、企業ホームページ経由などが1割。ヘッドハンティングで会社を変わるのは、その他のごく少数の人ということになります。

これらのうち、「キャリアアップの転職ができた人」は、年収で言えば上位1割強の層に集中しています。ヘッドハンティングと一部の人材紹介経由のCEOや役員といった高需要・高付加価値の人材が中心なのです。

つまり「求人倍率1.55倍」の中身は、コントラストの強いまだら模様。転職市場には激しい格差があります。業種・職種によるニーズの差、大都市圏と地方との間の差、年齢による差……。この全体像を見ず、「○○さんは45歳で転職して年収が跳ね上がった」という例を数件耳にしただけで、「自分もチャンス」と思い込むのは危険です。

転職に失敗する人の共通点とは?

だからこそ、これから転職を考える人は、自分の市場価値を冷静に見極めてほしいと思います。

とくに避けていただきたいのが、退職後に転職活動を始めること(ちなみに、転職者のうち2人に1人が「退職後に」活動を始めています)。職場への不満から衝動的に退職し、その後100社受けても受からず、2年後に貯蓄が底を尽きる、といった悲劇も多々あります。リストラで解雇されてやむを得ず、という場合を除いては、会社を辞めずに転職活動すべきです。

他にも、失敗する人には共通点があります。

そのポイントは主に二つ。「転職市場の相場」を見ずに活動すること、そして「なんのために転職するのか」――転職によって何を得たいのか、そもそも何を目指して働いているのか、といった、自分自身の「成功の定義づけ」をせずに行動を始めてしまうことです。

とくに二つめは抽象度の高いポイントですが、実はここが一番大事。出発点で目的を明確にしてこそ、その後とるべき行動もハッキリするからです。

ここで実例を見てみましょう。大手メーカーの部長を務めていた47歳のAさんは、自分の相場を事前に確認せず、年収・ポジション・エリアが現在と同等の、同業界の案件を探しました。この年齢ではかなり非現実的な希望と言えます。

案の定、見合う求人はナシ。1年たっても転職先は見つからず、ブランクが長引くにつれ、いよいよ不利になっていく、という悪循環に陥りました。

一方、Bさんも同じく大手メーカー部長。Aさんより10歳年長の57歳ですが、こちらは8カ月で転職できました。

事前調査を経て「そう簡単には決まらない」と覚悟したBさんは、エリア・業界・職種・年収にこだわらず幅広く面接を受けました。その中で目指したのは、「どんな業界でも状況の変化を分析する力がある」という自分の強みを活かすことでした。結果、前職とは畑違いのある企業に大歓迎で採用されました。規模や年収は前より下がったものの、本人は大満足。その企業が、自分の強みをいかんなく発揮できる場所だったからです。自分の中での「やりたいこと=成功の定義」をきちんと見定めていたからこその結果と言えます。

「転職してもいい人」の四つの条件とは?

さて、AさんとBさんの活動にはもう一つ大きな違いがあります。Aさんは同業種にこだわり、Bさんは業種を変えることをためらわなかった、という点です。

近年、同業種・同職種への転職に比べ、異業種・異職種への転職の比率が増えています。業種や職種といった表面的な条件ではなく「やりたいこと・できること」を大きく捉えると、選択肢は広がります。

では「大きく捉える」にはどうすればいいか。ここでポイントになるのが「ポータブルスキル」、どの業界に行っても役立つスキルです。課題設定力、対応力、対人コミュニケーション力などはその代表例。Bさんが自分の強みととらえた「現状分析力」もポータブルスキルの一つです。

このスキルは、自分ではなかなか見えづらいのが難点です。転職エージェントなどのプロや、周囲の同僚や知人に聞いて、さまざまな意見を集めましょう。ポータブルスキルを明確に打ち出せる人材は、業種・職種を問わず歓迎されるでしょう。

また、自分の携わってきた仕事を振り返り、そこで駆使してきた能力を分析することも有効です。

たとえば営業職は、異業種でも同じスキルを発揮できますが、「異職種」となると「経験がないから」とためらう人が少なくありません。

しかしここで、営業で駆使した能力を一段抽象的に捉え、「初対面の人とも関係構築できるスキル」と考えてみるとどうでしょう。異職種でも活かせる場所が、ふんだんにあることに気づくはずです。

以上から、「転職してもいい人」の条件を整理しましょう。

第一に、自分なりの成功の定義=ゴールを見定められる人。

第二に、ミドルの転職市場がそう甘くないことを認識し、自分の市場価値をきちんと確認できる人。

第三に、自分のポータブルスキルを明確化して業種や職種にこだわらずに選択肢を大きくとれる人、となります。

最後に、「会社に何をもたらせるか」を意識することも忘れずに。「~したい」だけではなく、「御社にこういうかたちで貢献できます」という姿勢で臨むことが大事です。これは世代を問わず、喜ばれる人材の必須条件と言えるでしょう。

≪『THE21』2018年6月号より≫
≪取材・構成:林 加愛≫

※この記事は「THE 21online」に掲載されました。CR40を運営するルーセントドアーズ株式会社代表の黒田真行が執筆しています。


cr40

広告